イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの特徴

草むらの上に立っているイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、鳥猟犬としての筋肉質な体つきと、優雅で気品のある雰囲気を兼ね備えた美しい犬種です。全体的にバランスの取れたプロポーションをしており、少し長めの胴としっかりとした四肢が特徴です。

最大の特徴とも言えるのが、その愛らしい顔立ちです。長く垂れた大きな耳は豊かな飾り毛で覆われており、歩くたびに揺れる姿がチャームポイントとなっています。

目はアーモンド型で、優しく知的な輝きを放ち、見る人を穏やかな気持ちにさせてくれます。

かつては狩猟時の怪我を防ぐために尻尾を短く断尾する習慣がありましたが、現在は動物愛護の観点から、自然な長さのまま残すケースも増えています。嬉しい時にはその尻尾を激しく振り、体全体で喜びを表現する姿は、この犬種の明るい性質をよく表しています。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの大きさ

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは中型犬に分類されます。

成犬時の体高は50cm前後、体重は20kg前後が目安となります。日本で人気のボーダーコリーと比べると、ほぼ同じかややがっしりとした印象を受けるでしょう。

一般的にオスの方がメスよりも骨格が太く、体格がやや大きくなる傾向があります。抱きかかえるには少し重みを感じるサイズですが、室内で一緒に暮らすパートナーとしては程よい存在感があります。

子犬の頃はコロコロとした体型ですが、成長スピードは比較的早いです。生後半年から1年ほどで体高はほぼ成犬並みになり、そこから2年から3年かけて筋肉がつき、胸の厚みが増して大人の体つきへと完成していきます。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの被毛タイプ

被毛は「ダブルコート」と呼ばれる二重構造で、寒さや水濡れに強い性質を持っています。上毛は滑らかな手触りで、直毛(ストレート)またはわずかに波打ったウェーブ状をしています。

耳、胸、お腹、脚の後ろ側には「フェザリング」と呼ばれる美しい飾り毛があります。この飾り毛は優雅さを引き立てますが、散歩中に枯れ葉や小枝が絡まりやすい部分でもあります。

抜け毛の量は、春と秋の換毛期にはかなり多くなります。ゴールデン・レトリーバーなどの大型犬ほどではありませんが、室内飼育ではこまめな掃除が必要です。

美しい毛並みを保つためにも、毎日のブラッシングや定期的なトリミングが欠かせません。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの毛色の種類

この犬種の代表的な毛色は、「レバー&ホワイト」と「ブラック&ホワイト」の2種類です。どちらも白地をベースに、有色部分が斑点や大きな模様として入ります。

「レバー」とは、赤みのある濃い茶色のことです。日本ではこのレバー&ホワイトの個体をよく見かけます。落ち着いた色合いで、自然の中によく馴染むカラーです。

これらの基本色に加え、目の上や頬、耳の裏などに茶褐色の斑点が入る「タン・ポイント」を持つ個体もいます。これを「トライカラー(3色)」と呼び、眉毛があるような表情豊かで愛嬌のある顔立ちに見えるのが特徴です。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの性格

飼い主に寄り添って座るイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル

非常に明るく、陽気で活動的な性格をしています。

家族に対して深い愛情を持っており、常に誰かのそばにいたがる甘えん坊な一面があります。「ベルクロ・ドッグ(マジックテープのようにくっついて離れない犬)」と称されるほど、人との触れ合いを好みます。

もともとが猟犬であるため、好奇心が旺盛で、何かを探したり追いかけたりする遊びが大好きです。屋外ではエネルギッシュに動き回りますが、十分な運動さえしていれば、室内では穏やかに過ごすことができます。

基本的には友好的で、子供や他の犬とも仲良くできる素質を持っています。

ただし、興奮しやすい面もあり、嬉しいと飛びついてしまったり、遊びの延長で甘噛みが強くなったりすることがあります。落ち着かせるトレーニングを日常的に取り入れることが大切です。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの歴史

林の中を探索するイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル

原産国はイギリスで、数あるスパニエル種の中でも非常に古い歴史を持つ犬種の一つです。もともとは鳥猟犬(ガンドッグ)として活躍していました。

茂みに潜んでいる鳥を驚かせて飛び立たせる(Springさせる)役割を担っていたことから、「スプリンガー」という名前がついたと言われています。飛び立った鳥を主人が撃ち落とした後、その獲物を回収する役割も果たしていました。

実は、アメリカン・コッカー・スパニエルやイングリッシュ・コッカー・スパニエルとは共通の祖先を持っています。かつては同じ種類の犬として扱われていましたが、体の大きさによって役割が分担され、やがて別の犬種として独立しました。

日本でも熱心な愛好家が多く、ドッグショーやアジリティなどの競技会でも活躍しています。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの価格相場

隣り合って伏せるイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの親子

日本国内で子犬を迎える場合の価格相場は、おおよそ30万円から60万円程度が目安となります。親犬がドッグショーのチャンピオン犬であったり、毛色が珍しかったりする場合は、さらに高額になることもあります。

入手ルートとしては、専門のブリーダーから直接迎えるケースが一般的です。

一般的なペットショップで見かける機会は比較的少ない犬種です。そのため、お迎えを検討する際は、早めに情報を集める必要があります。

極端に価格が安い場合は注意が必要です。遺伝的な疾患への配慮がされていなかったり、健康状態に問題があったりする可能性も否定できません。

価格だけでなく、飼育環境や親犬の様子などを総合的に判断することが大切です。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのブリーダーを探す方法

インターネットの子犬紹介サイトや、犬種クラブの情報を活用してブリーダーを探すのが近道です。「イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル ブリーダー」と検索すると、いくつかの専門犬舎が見つかります。

見学に行く際は、犬舎の衛生状態や、親犬が人懐っこく健康的であるかを確認しましょう。

特にこの犬種は、性格の良さが飼いやすさに直結します。親犬が攻撃的でなく、穏やかであるかを見ることは重要なチェックポイントです。

ブリーダー以外にも、保護犬の里親募集サイトで出会える可能性もあります。成犬から迎える場合は、その子の性格がある程度定まっているため、ライフスタイルに合うか判断しやすいというメリットがあります。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの飼い方

室内のクッションの上でくつろぐイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル

家族と過ごすことを至上の喜びとする犬種なので、屋外での係留飼育ではなく、室内飼育が基本となります。リビングなど家族が集まる場所に居場所を作ってあげましょう。

活発に動き回るため、室内での怪我防止対策が必要です。フローリングの床は滑りやすく、関節に負担をかけるため、滑り止めのマットやカーペットを敷くことをおすすめします。

食欲が旺盛な子が多いため、食事管理は重要です。運動量に見合った食事量を与えないと、すぐに太ってしまいます。

肥満は足腰への負担や病気のリスクを高めるため、定期的に体重を測り、体型をキープしましょう。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの運動量

非常に体力があり、活動的な犬種なので、毎日の十分な運動が不可欠です。

散歩は1日2回、1回あたり1時間程度を目安に行います。ただ歩くだけでなく、早歩きを混ぜたり、時にはドッグランで思い切り走らせたりする必要があります。

ボール投げやフリスビーなどの持ってこい遊びは、彼らの本能を満たす最高の運動です。また、頭を使うことも好きなので、知育玩具を使ったり、宝探しゲームをしたりするのもストレス発散に効果的です。

運動不足になると、ストレスから無駄吠えが増えたり、家具をかじったりといった問題行動につながることがあります。雨の日でも室内で遊ぶ時間を設けるなど、エネルギーを発散させる工夫が必要です。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのしつけ方

賢く、飼い主を喜ばせたいという意欲が強いため、しつけは比較的入りやすいタイプです。

ただし、叱るよりも褒めて伸ばす「陽性強化」のトレーニングが向いています。子犬の頃からいろいろな人や犬、環境に慣れさせる「社会化」を積極的に行いましょう。

散歩中の引っ張り癖には注意が必要です。鳥猟犬の本能で、興味のある匂いや動くものを見つけると突進してしまうことがあります。

横について歩く「リーダーウォーク」や、名前を呼んだら戻ってくる「呼び戻し」の訓練は、安全を守るためにも必須です。

興奮して甘噛みや飛びつきが出たときは、低い声で短く注意し、落ち着くまで無視をするなどの対応を一貫して行います。メリハリのある態度で接することで、信頼関係を築いていくことができます。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの寿命と病気

遠くを見つめるイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのアップ

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの平均寿命は12歳から14歳程度と言われています。

中型犬としては平均的な寿命ですが、日頃の健康管理や飼育環境によって、さらに長生きしてくれることも珍しくありません。

健康で長く暮らすためには、適切な体重管理と適度な運動、そして定期的な健康診断が鍵となります。また、遺伝的な病気のリスクを知っておき、早期発見に努めることも大切です。

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのかかりやすい病気

この犬種と暮らす上で、特に気をつけておきたい健康トラブルについて解説します。垂れ耳の犬種特有のトラブルや、遺伝的に発症しやすい疾患などがあります。

日頃から愛犬の様子をよく観察し、異変があればすぐに獣医師に相談できるようにしておきましょう。

外耳炎

大きく垂れた耳は通気性が悪く、湿気がこもりやすいため、外耳炎になりやすい傾向があります。

耳を頻繁に掻いたり、頭を振ったり、耳から嫌な臭いがしたりする場合は要注意です。週に1回程度の耳掃除やチェックを習慣にしましょう。

股関節形成不全

股関節の形が正常に発育せず、歩行に異常が出たり痛みが生じたりする病気です。

遺伝的な要因も大きいですが、肥満や成長期の過度な運動によって悪化することもあります。歩き方がおかしい、散歩に行きたがらないなどのサインが見られたら、早めに検査を受けましょう。

進行性網膜萎縮症(PRA)

網膜が徐々に萎縮し、最終的には失明してしまう遺伝性の目の病気です。初期段階では暗い場所で見えにくくなる「夜盲」の症状が現れます。

確実な予防法はありませんが、遺伝子検査を行っているブリーダーから子犬を迎えることで、リスクを減らすことができます。

まとめ

屋外で並んで座る2頭のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、美しい外見と、陽気で愛情深い性格を併せ持つ素晴らしい犬種です。家族と一緒に過ごすことを何よりも喜び、良きパートナーとして人生を豊かにしてくれます。

一方で、十分な運動量を確保する必要があることや、被毛のお手入れに手間がかかることなど、飼い主としての覚悟も求められます。毎日の散歩や遊びの時間をしっかりと取れる、アクティブな家庭や、犬との時間をたっぷりと楽しみたい人に最適です。

彼らの特性を正しく理解し、愛情を持って接すれば、かけがえのない最高の家族となるでしょう。もしこの犬種を迎える環境が整っているのであれば、ぜひその素晴らしい毎日に一歩踏み出してみてください。