犬に鮭(サーモン)を与えても大丈夫!

食器の前に伏せて鼻先を舌で舐めている犬

結論からお伝えすると、犬に鮭(サーモン)を与えても問題ありません

スーパーで売られている鮭には「白鮭」「銀鮭」「アトランティックサーモン」「トラウトサーモン」など様々な呼び名や種類がありますが、基本的にはどれも同じ「サケ科」の魚として扱って差し支えありません。

ただし、犬に与える際には「加熱すること」「骨を取り除くこと」「味付けをしないこと」という3つの絶対条件があります。これらを守れば、鮭は犬にとって良質なタンパク源や脂質源となる優れた食材です。

一方で、人間が好む「塩鮭」や「焼き鮭」などの加工品は塩分が非常に多く、犬の腎臓や心臓に負担をかけるため与えてはいけません。また、「生鮭」や「サーモンの刺身」も、寄生虫のリスクや酵素の問題があるため、生のまま与えることは避ける必要があります。

鮭はあくまでドッグフードのトッピングや、特別な日のおやつとして位置づけましょう。主食として大量に与えるのではなく、食事の彩りや栄養補助として活用するのが、愛犬の健康を守る正しい与え方です。

鮭(サーモン)に含まれる栄養素と犬への影響

ざるの上に並べられた鮭の切り身

鮭は栄養価が高く、犬の健康維持に役立つ成分が豊富に含まれています。ここでは主な栄養素と、それが犬の体内でどのように働くのかを解説します。

良質な動物性タンパク質

鮭は非常に良質な動物性タンパク質を含んでいます。タンパク質は筋肉や皮膚、被毛、臓器など、犬の体を作るために欠かせない栄養素です。

肉類にアレルギーがある犬にとって、魚肉である鮭は貴重なタンパク源の代わりとなり得ます。運動量が多いジャック・ラッセル・テリアや、筋肉質で活動的なフレンチ・ブルドッグなどの体作りもサポートします。

EPA・DHA(オメガ3脂肪酸)

鮭の脂には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。これらは体内で合成できない必須脂肪酸の一種です。

オメガ3脂肪酸は、皮膚のバリア機能を保ち、被毛の艶を維持する効果が期待できます。トイ・プードルやヨークシャー・テリアなど、被毛の美しさが特徴的な犬種には特に嬉しい成分です。

また、血液の流れを健康に保つ働きや、関節の炎症を抑える働きも知られています。足腰のケアが重要になるシニア犬や、ダックスフンドのような関節トラブルに注意が必要な犬種にも適しています。

アスタキサンチン

鮭の身が赤いのは、アスタキサンチンという天然の色素成分によるものです。アスタキサンチンには非常に強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する働きがあります。

この抗酸化作用は、細胞の老化防止(アンチエイジング)や、免疫力の維持に役立つと言われています。年齢とともに皮膚トラブルが出やすくなったり、免疫力が低下しがちな高齢犬の健康サポートとして注目されている成分です。

ビタミン類(ビタミンD・ビタミンB群)

鮭にはカルシウムの吸収を助けるビタミンDや、代謝に関わるビタミンB群も含まれています。

ビタミンDは骨や歯を丈夫にするために必要であり、成長期の子犬から成犬まで幅広く必要な栄養素です。ただし、「総合栄養食」と記載のあるドッグフードを食べていれば不足することはありません。

鮭由来製品の活用

生の切り身だけでなく、市販されている「サーモンオイル」や「ドッグフードのサーモン味」、「フリーズドライの鮭」なども、これらの栄養素を効率よく摂取できる手段です。

調理の手間を省きたい場合は、こうした犬専用製品を活用するのも一つの賢い選択です。

犬に与えてもいい鮭(サーモン)の量

飼い主がグラムを測ろうとしている鮭を見つめる犬

犬に鮭を与える際は、あくまで「おやつ」や「トッピング」として扱い、主食の栄養バランスを崩さない範囲にとどめることが大切です。

一般的に、おやつやトッピングの量は「1日に必要な総カロリーの10%程度」までにするのが理想的とされています。

鮭は栄養価が高い反面、脂質も含まれているため、無制限に与えるとカロリーオーバーや肥満の原因になります。ドッグフードをしっかり食べているのであれば、鮭は香り付けやご褒美として少量与えるだけで十分です。食事全体のバランスを最優先に考えましょう。

具体的な量は体重によって異なりますが、チワワやトイ・プードルのような小型犬であれば、小さじ1杯程度のほぐした身でも十分な量になります。

柴犬などの中型犬以上であっても、切り身を丸ごと与えるのは多すぎます。いつものフードを少し減らして調整するなど、カロリー計算を意識してください。

初めて鮭を与えるときは、アレルギーや消化不良を起こす可能性を考慮し、ごく少量からスタートして様子を見ることが重要です。食後に嘔吐や下痢、体を痒がる様子がないかを確認し、問題がなければ徐々に量を増やしていくという慎重なステップを踏んでください。

特に消化器官が未発達な子犬や、消化機能が衰えてきたシニア犬には注意が必要です。

成犬よりも控えめな量にし、細かくすり潰して消化しやすくするなどの工夫をしてあげましょう。体の小さな犬ほど、少しの量が体に与える影響が大きくなることを忘れてはいけません。

また、腎臓病や心臓病などの持病があり食事制限を受けている犬や、ダイエット中の犬の場合は、飼い主の自己判断で与えるのは避けてください。

鮭に含まれるタンパク質や脂質が治療の妨げになることもあるため、必ずかかりつけの獣医師に相談し、許可を得てから与えるようにしましょう。

犬に与える鮭(サーモン)のおすすめの調理法

油をひかずに鮭をフライパンで焼いている様子

犬に鮭を安全に与えるためには、適切な下処理と加熱調理が不可欠です。人間用の料理とは異なり、素材そのものの味を生かす調理法を心がけてください。

基本的な調理手順:茹でる・蒸す

最も安全でおすすめな調理法は「茹でる」または「蒸す」ことです。お湯で茹でることで余分な脂分が落ち、カロリーを抑えることができます。

鍋にお湯を沸かし、味付けをしていない生の鮭を入れて、中心部までしっかりと火を通します。加熱後は必ず人肌程度まで冷ましてください。

骨の除去とほぐし作業

加熱が終わったら、皮と骨を丁寧に取り除きます。鮭の骨は細くて鋭いものが多く、加熱しても硬いまま残ることがあります。

喉や消化管を傷つける恐れがあるため、指で身を細かくほぐしながら、骨が残っていないか入念に確認してください。

焼く場合の注意点

フライパンやグリルで焼く場合は、油をひかずに素焼きにします。焦げ目は犬の胃腸に負担をかける場合があるため、焦げた部分は取り除いて与えましょう。

また、焼くと水分が飛んで身が硬くなりやすいため、細かくほぐすか、スープなどを加えて水分を補給してあげると食べやすくなります。

生食・刺身を避ける理由

人間用のサーモン刺身であっても、犬には加熱してから与えることを推奨します。

生の魚にはチアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素が含まれており、長期的に多量摂取するとビタミンB1欠乏症になるリスクがあるからです。

また、スーパーの鮮魚コーナーにある「生鮭(加熱用)」をそのまま与えるのは絶対にやめてください。加熱用として販売されている鮭には、アニサキスなどの寄生虫が存在する可能性が高く、食中毒の原因となります。

犬に鮭(サーモン)を与える際の注意点

テーブル上の人間用に調味した鮭料理のそばで立つ犬

鮭は栄養豊富な食材ですが、与え方を間違えると愛犬の健康を害する深刻なリスクにつながります。ここでは、飼い主さんが絶対に避けるべきNGパターンと、注意すべきポイントを整理して解説します。

人間用の加工食品は塩分過多のためNG

スーパーでよく見かける「塩鮭」「紅鮭(甘口・辛口)」や、お弁当に入っている「焼き鮭」は、保存性を高めるために大量の塩分が使われています。これらを犬に与えると塩分の過剰摂取となり、心臓や腎臓に大きな負担をかけてしまいます。

また、おつまみの「鮭とば」やご飯のお供である「鮭フレーク」も、塩分だけでなく添加物や香辛料が含まれていることが多いため、決して与えてはいけません。

犬に与える鮭は、必ず「無塩」の生鮭を選んで調理してください。

生食による寄生虫リスクとアニサキス中毒

加熱用として販売されている生の鮭には、アニサキスなどの寄生虫が付着している可能性があります。これを犬が生で食べてしまうと、激しい腹痛や嘔吐を伴うアニサキス中毒を引き起こす危険性があります。

人間用の刺身であっても、生の魚を長期的に摂取し続けると、体内のビタミンB1を破壊する酵素の影響を受ける可能性があります。

寄生虫や細菌感染のリスクをゼロにするためにも、犬には必ず中心部まで火を通してから与えることを徹底してください。

骨の誤飲と消化管へのダメージ

鮭の骨は硬く鋭利なものが多いため、そのまま飲み込むと喉に刺さったり、食道や胃腸の粘膜を傷つけたりする恐れがあります。特に食事を丸呑みしやすい犬は注意が必要です。

加熱調理をした後でも骨は硬いまま残ることがあります。飼い主さんが指で身を細かくほぐしながら、小骨一本まで丁寧に取り除く作業を必ず行ってください。

脂質の摂りすぎと膵炎・肥満のリスク

サーモン、特に「ハラス」と呼ばれる腹身の部分は非常に脂が乗っています。適度な脂質は皮膚に良い影響を与えますが、摂りすぎるとカロリーオーバーによる肥満はもちろん、消化不良による下痢の原因になります。

さらに怖いのが「急性膵炎」のリスクです。脂肪分の多い食事は膵臓に過度な負担をかけ、激しい嘔吐や腹痛を引き起こす膵炎の引き金になることがあります。

ミニチュア・シュナウザーのように脂質の代謝が苦手な犬種や、お腹が弱い犬には、脂身の多い部位は避けた方が無難です。

食物アレルギーと持病がある場合の対応

稀にですが、鮭に対してアレルギー反応を示す犬もいます。初めて与えた後に、口周りや耳を執拗に痒がる、皮膚が赤くなる、軟便になるといった症状が出た場合は、アレルギーの可能性があります。

また、腎臓病や心臓病の治療中で、タンパク質やナトリウムの制限が必要な犬の場合、鮭に含まれる成分が病状に悪影響を与えることがあります。

持病がある場合は、自己判断でトッピングをする前に必ず獣医師の指示を仰いでください。

体調に異変を感じた場合の対処法

もし鮭を食べた後に「何度も嘔吐する」「激しい下痢をする」「顔が腫れる」「ぐったりして動かない」といった症状が見られた場合は、様子を見ずに早急に動物病院を受診してください。

受診の際は、「いつ」「どの種類の鮭を」「どのくらいの量(生か加熱か)」食べたかを獣医師に伝えると、診断がスムーズになります。

軽い軟便程度であれば一食抜いて様子を見ることもありますが、元気がない場合は迷わずプロに相談しましょう。

まとめ

ほぐしている最中の焼き鮭

鮭(サーモン)は、良質なタンパク質やオメガ3脂肪酸、アスタキサンチンなどを含み、犬の皮膚・被毛や健康維持に役立つ素晴らしい食材です。しかし、与え方を間違えると健康を害するリスクもあります。

「塩や味付けをしていないものを選ぶ」「中心部までしっかり加熱する」「骨を完全に取り除く」という3つのルールを必ず守り、主食ではなくトッピングやおやつとして少量を与えましょう。

愛犬の体調や持病に合わせ、不安な場合は獣医師に相談してから取り入れることが大切です。正しい知識で鮭を活用し、愛犬の食生活を豊かにしてあげてください。