
結論からお伝えすると、犬は基本的に馬肉を食べても問題ありません。
馬肉は高たんぱくで低脂質な食材として知られており、犬の健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれています。トイプードルやチワワといった小型犬から、ゴールデンレトリーバーのような大型犬まで、幅広い犬種で食べさせることができます。
現在、犬用として流通している馬肉には様々な形状があります。新鮮な生肉や使いやすいミンチ、保存がきくジャーキー、そしてドライフードの原材料として使われているものなどです。
飼い主さんのライフスタイルや愛犬の好みに合わせて選びやすいのも特徴と言えるでしょう。
ただし、大切なのは「馬肉だけで食事を済ませない」ということです。基本的には、栄養バランスが整った「総合栄養食」であるドッグフードを主食とし、馬肉はあくまでトッピングやご褒美などの補助的な食材として活用する考え方が推奨されます。
また、すべての犬にとって安全というわけではありません。特に腎臓病や心臓病などの持病がある場合、タンパク質やミネラルの制限が必要なことがあります。
持病がある愛犬に与える際は、自己判断を避け、必ずかかりつけの獣医師に相談してからにしましょう。生食用の衛生管理がされていない馬肉を生肉として与えることも、寄生虫や細菌感染のリスクがあるため注意が必要です。

馬肉は単に美味しいだけでなく、愛犬の体を内側からサポートする優れた栄養素がたくさん詰まっています。
ここでは、馬肉に含まれる代表的な成分と、それを摂取することで期待できる具体的な健康効果について、項目ごとに詳しく見ていきましょう。
馬肉の最大の特徴は、非常にヘルシーである点です。
牛や豚といった他の肉類と比較しても、脂質が少なくカロリーが低いため、肥満気味の犬や運動量が落ちてきたシニア犬の食事管理にも適しています。
それでいて、筋肉の材料となる良質なタンパク質は豊富に含まれています。
馬肉には、血液を作り全身に酸素を運ぶために欠かせない鉄分が、牛肉や豚肉よりも多く含まれています。
また、エネルギー源として即効性のあるグリコーゲンも豊富です。これらは、散歩やドッグランで元気に走り回るための体力維持に役立ちます。
良質なタンパク質を摂取することは、丈夫な筋肉を作る助けになります。
特に足腰の筋肉を維持したいドッグスポーツを行っている犬や、活発なジャックラッセルテリアなどは、馬肉を取り入れることで引き締まった体づくりをサポートできるでしょう。
馬肉に含まれる必須脂肪酸やビタミン類は、皮膚や被毛の健康維持にも寄与します。
「毛並みがパサついている」「皮膚が乾燥している」と感じる場合、食事に馬肉を取り入れることで、ツヤのある被毛や健康的な皮膚の状態を目指すことができます。
明確な研究データはありませんが、消化吸収が良い馬肉を与えることで、腸内環境に変化が見られることがあります。
飼い主さんの中には、愛犬の体臭が気にならなくなったり、うんちの臭いや状態が落ち着いたと感じるケースがあるようです。
消化器への負担が比較的少ない食材のため、お腹の調子を整える犬用の手作りごはんを作りたいときの一つの選択肢となります。

馬肉を与える量は、愛犬の体重や活動量によって異なります。一般的には、1日に必要な総カロリーの10%から20%程度を上限として、その分主食のドッグフードを減らして調整します。
例えば体重3kgのトイプードルであれば、約20~40グラム程度のごく少量が目安になることもあります。
あくまで主食は総合栄養食であるドライフードです。馬肉をトッピングした分だけ、ドライフードの量を減らさないと、カロリーオーバーで肥満の原因になります。
正確な量を知りたい場合は、愛犬の1日の必要カロリーを計算し、そこから馬肉分のカロリーを差し引いてフード量を決定してください。
ダイエット中の犬に与える場合も、カロリー計算は必須です。馬肉は低カロリーですが、ゼロではありません。
「ヘルシーだからたくさんあげても大丈夫」と誤解せず、総摂取カロリーが目標値を上回らないよう厳密に管理することが、減量成功の鍵となります。
初めて馬肉を与えるときは、必ずごく少量からスタートしてください。いきなり規定量を与えると、急な食事の変化に胃腸が驚き、下痢や軟便を引き起こす可能性があります。
最初はスプーン1杯程度から始め、数日かけて様子を見ながら徐々に量を増やしていくのが安全な方法です。

栄養価が高くメリットの多い馬肉ですが、与え方を間違えたり、体質に合わなかったりするとトラブルの原因になることもあります。愛犬の健康を守るために、飼い主さんが事前に知っておくべきリスクと対策について整理します。
馬肉は比較的アレルギーが出にくい食材と言われていますが、絶対にアレルギーが出ないわけではありません。
食べた後に体をかゆがる、皮膚が赤くなる、耳を頻繁に気にする、目の周りが赤くなるといった症状が見られた場合は、アレルギーの可能性があります。直ちに与えるのを中止し、獣医師に相談してください。
体質によっては馬肉が合わず、下痢や嘔吐をしてしまう犬もいます。特に脂質に敏感な犬や、胃腸がデリケートな犬では注意が必要です。
与え始めは特にうんちの状態をよく観察し、いつもより緩かったり、粘液が混じっていたりする場合は、量が多すぎるか体質に合っていない可能性があります。
馬肉は生で与えられることも多いですが、衛生管理には細心の注意が必要です。生肉はサルモネラ菌や大腸菌などの食中毒リスクがゼロではありません。
必ず「生食用」として処理・販売されている新鮮なものを選び、保存方法や賞味期限を厳守してください。抵抗力の弱い子犬やシニア犬には、加熱して与える方が安心です。
人間用の馬刺し醤油がついたものや、味付けされた馬肉ジャーキー、燻製などは犬に与えてはいけません。塩分や香辛料、保存料などが多く含まれており、犬の内臓に大きな負担をかけます。
必ず「犬用・ペット用」として販売されている無添加のものを選びましょう。
腎臓病や慢性腎不全、心臓病、尿路結石などの持病がある犬は、タンパク質やリン、ミネラルの摂取制限が必要な場合があります。
馬肉は高タンパクでリンも含むため、病状を悪化させるリスクがあります。これらの持病がある場合は、独自の判断で与えず、必ず獣医師の指導に従ってください。

実際に馬肉を愛犬の食事に取り入れる際、どのような形で与えるのが良いのでしょうか。
ここでは、生肉、加熱、加工品など、それぞれの形状に合わせた具体的な活用方法と、美味しく安全に食べてもらうためのポイントを紹介します。
最も一般的で安心な方法は、馬肉を茹でてドライフードにトッピングすることです。
加熱することで殺菌効果が期待でき、消化もしやすくなります。茹で汁にも栄養が溶け出しているため、冷ましてからフードにかけてあげると、水分補給にもなり嗜好性も高まります。
生肉を与える場合は、新鮮なペット用生馬肉を使用します。解凍したらすぐに使い切り、再冷凍は避けてください。
ミンチ状のものはドライフードに混ぜやすく、食べムラがある犬の食欲増進に役立ちます。衛生面が気になる場合は焼いてあげると良いでしょう。
乾燥させた馬肉ジャーキーは、トレーニングのご褒美やおやつとして便利です。ただし、硬すぎるものは丸飲みしてのどに詰まらせる危険があります。
愛犬の口のサイズに合わせて小さくちぎるか、キッチンバサミでカットしてから与えるようにしましょう。
どのような形状であっても、喉に詰まらせない大きさにカットすることは基本です。特に早食いの癖がある犬や、噛む力が弱くなった老犬には配慮が必要です。
また、冷蔵庫から出したばかりの冷たい肉は胃腸への刺激になるため、常温に戻すか少し温めてから与えるのが理想的です。

ジビエ肉として馬肉と並んで人気なのが鹿肉です。どちらもヘルシーなイメージがありますが、栄養成分には少し違いがあります。
愛犬の体質や目的に合わせてどちらを選ぶべきか、それぞれの特徴を比較しながら考えてみましょう。
| 比較項目 | 馬肉の特徴 | 鹿肉の特徴 |
|---|---|---|
| カロリー・脂質 | 非常に低カロリー・低脂質 | 馬肉よりさらに低脂質な部位も多い |
| 主な栄養素 | 鉄分、グリコーゲンが豊富 | 鉄分、アセチルカルニチンが豊富 |
| 期待できる効果 | 体力回復 瞬発的なエネルギー補給 |
脳の認知機能向上 脂肪燃焼サポート |
| おすすめのタイプ | 活発な犬 食欲が落ちている犬 |
脳機能を維持したいシニア犬 ダイエット中の犬 |
どちらも高タンパクでヘルシーですが、鹿肉には脳の機能を向上させたり、疲労やストレス軽減に役立つとされる「アセチルカルニチン」が特に豊富に含まれていると言われています。そのため、脳の認知機能の低下が気になり始めるシニア犬に活用されることがあります。
また、脂肪の燃焼を促す「L-カルニチン」も含まれていることから、本格的にダイエットをさせたい場合に鹿肉が選ばれることも多いです。
一方、馬肉はグリコーゲンが豊富で、素早いエネルギー補給に適しています。
活動量が多い犬や、食が細くなってしまった犬に活力を取り戻してほしいときは、馬肉の方が向いている場合があります。愛犬の今の状態に合わせて選ぶと良いでしょう。
食物アレルギー対策として選ぶ場合は、過去に食べてアレルギー反応が出たことがない方の肉を選びます。
鶏肉や牛肉にアレルギーがある犬にとって、馬肉も鹿肉も貴重なタンパク源となります。交差反応のリスクも考慮し、獣医師と相談しながらローテーションするのも一つの方法です。

馬肉は、高たんぱく・低脂肪で鉄分などの栄養素も豊富な、犬にとって非常に優れた食材です。適切な量と与え方を守れば、筋肉の維持や皮膚・被毛の健康、食欲増進など多くのメリットが期待できます。
しかし、生肉のリスクや持病への影響など、注意すべき点も存在します。
主食のドライフードとのバランスを考え、愛犬の体調や体質に合わせて上手に取り入れることで、日々の食事をより豊かで健康的なものにしていきましょう。