犬はよもぎを食べても大丈夫?

ざるにのせられた1束のよもぎ

結論から言うと、よもぎ(蓬)は犬にとって強い毒性を持つ植物ではありません。そのため、散歩中に道端のよもぎを少量かじってしまった、という程度であれば、直ちに深刻な問題に発展するケースは稀です。

しかし、安全だからといって積極的に与えるべき食材でもありません。よもぎは繊維質が非常に豊富な野草であり、犬の消化器系には負担がかかりやすいためです。

また、生えている場所によっては犬にとって有害な物質が付着している可能性も否定できません。基本的には、犬の健康維持のためにあえて与える必要はない食材だと考えてください。

犬によもぎを与えない方が良い理由

診察台の上で獣医師に聴診器を当てられている犬

よもぎに強い毒性はないものの、犬に与えることを推奨しない理由はいくつかあります。特に、体が小さいチワワやトイ・プードルなどの小型犬は、少量でも影響が出やすい可能性があるため注意が必要です。

消化器系への負担と不調

よもぎは、人間にとっては薬効が期待される一方で、犬にとっては消化が難しい豊富な食物繊維を含んでいます。犬の消化システムは、このような硬い繊維質を大量に分解することを得意としていません。

そのため、よもぎを食べることによって消化不良を起こし、下痢、嘔吐、腹痛といった消化器症状を引き起こす可能性があります。

アレルギー症状を引き起こす可能性

よもぎはキク科の植物です。キク科の植物に対してアレルギー反応を示す犬も存在します。

もし愛犬がブタクサやタンポポなどでアレルギー症状(皮膚のかゆみ、目の充血、くしゃみなど)を示したことがある場合、同じキク科のよもぎにも反応する可能性があります。

初めて口にする場合は、アレルゲン(アレルギーの原因物質)となり得ることを考慮する必要があります。

道端のよもぎに潜む中毒の危険性

散歩中に見かける道端のよもぎを犬が口にすることは、最も避けるべき状況です。公園や道路脇に生えているよもぎには、他の犬や野生動物の排泄物(細菌や寄生虫)が付着している可能性があります。

さらに深刻なのは、除草剤や殺虫剤といった化学薬品が散布されている危険性です。これらの化学物質は犬にとって強い毒性を示し、摂取量によっては神経症状や重度の中毒を引き起こす可能性があります。

排気ガスなどによる汚染についても、見た目では安全かどうか判断できないため、道端の野草は食べさせないことが原則です。

犬がよもぎを誤って食べた場合の対応

少し不安そうな顔で人になでられている犬

もし愛犬がよもぎを食べてしまった場合、飼い主はまず落ち着いて状況を把握することが大切です。

いつ、どれくらいの量(かじった程度か、大量か)を食べたのかを確認してください。また、食べたものが「生のよもぎ」なのか、「よもぎを含む加工品」なのかも重要です。

食べた量が少量で、犬の様子に普段と変わったところがなければ、慌てて病院に行く必要はありません。まずは自宅で様子を観察し、食欲不振、嘔吐、下痢、元気消失などの異変がないかを確認しましょう。

食欲旺盛で拾い食いの癖がある犬は、よもぎ以外のもの(ゴミや石など)を一緒に食べていないかも注意してください。

もし、よもぎを食べた後に何度も嘔吐を繰り返す、下痢が止まらない、ぐったりしている、呼吸が荒いなどの明らかな体調不良が見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。

その際、いつ何をどれくらい食べたかを獣医師に正確に伝えることが、迅速な診断と治療につながります。

よもぎパンやよもぎ茶は与えても大丈夫?

お皿にのせられたよもぎ餅

生のよもぎ以上に、人間用に加工されたよもぎ製品を犬に与えることは絶対に避けてください。これらは犬にとって有害な成分を含んでいる可能性が非常に高いためです。

よもぎパンやよもぎ蒸しパンには、よもぎ以外に大量の砂糖、塩分、バターやマーガリンといった油脂が使われています。これらは犬にとって高カロリーであり、肥満や膵炎(すいえん:膵臓の炎症で、重症化すると命に関わる病気)のリスクを高めます。

よもぎ茶も推奨できません。製品によっては、よもぎ以外の成分(例えば、犬に有毒なカフェインを含む緑茶など)がブレンドされている場合があります。

特に危険なのが「よもぎ餅」です。餅は粘着性が非常に高く、犬がうまく飲み込めずに喉や食道に詰まらせ、窒息する危険性が極めて高い食品です。また、餅やあんこに含まれる大量の糖分も犬の健康に適していません。

少量のよもぎであれば犬にとってメリットはある

食器からフードを食べようとしている犬

よもぎはビタミン(ビタミンK、ビタミンA、ビタミンCなど)やミネラル、クロロフィル(葉緑素)といった栄養素を含むことも事実です。これらの成分は、適量であれば犬の健康維持に役立つ可能性があります。

しかし、これらのメリットを安全に享受するためには、道端のよもぎや人間用の加工品を与えるべきではありません。

もし、よもぎの持つ栄養素を愛犬の健康に取り入れたいと考える場合は、必ず犬用に製造されたサプリメントや、よもぎが配合されたペットフード、犬用のおやつを選ぶようにしてください。これらは犬の消化性や安全性、適切な摂取量が考慮されて製造されています。

まとめ

屋外で群生しているよもぎ

よもぎは犬にとって毒草ではありませんが、消化不良やアレルギー、汚染のリスクがあるため、積極的に与えるべき食材ではありません。特に道端のよもぎは、除草剤などの危険があるため絶対に食べさせないでください。

よもぎパンやよもぎ餅といった人間用の加工品は、糖分や塩分、窒息のリスクがあり、犬にとっては非常に危険です。もし愛犬がよもぎを食べて体調に異変が見られた場合は、速やかに動物病院に相談しましょう。

よもぎの栄養素を取り入れたい場合は、安全性が確認された犬専用の製品を利用してください。