トイプードルで注意したい主な病気

獣医師にお手をしているトイプードル

トイプードルで注意したい病気には、膝蓋骨脱臼(パテラ)、歯周病、白内障、糖尿病、膵炎、進行性網膜萎縮症(PRA)などがあります。

トイプードルはあらゆる病気に弱い犬種ではありませんが、犬種との関連が知られている疾患や、犬全体と比べて保険請求割合が高い疾患が複数あります。

また、骨折、僧帽弁閉鎖不全症、気管虚脱など、小型犬に共通して注意したい健康問題もあります。

病気によっては初期症状がわかりにくく、見た目が元気でも進行している場合があります。普段から歩き方や食欲、飲水量、呼吸、目の状態などを確認することが大切です。

病気の保険請求割合と犬全体との比較

アニコムが公表した「家庭どうぶつ白書2025」では、0〜12歳のトイプードル162,442頭を対象とした保険請求データが掲載されています。

疾患の大分類別では、消化器疾患が28.7%、皮膚疾患が22.3%、耳の疾患が17.7%となっており、これらは日常の健康管理でも注意したい疾患群です。

個別の疾患では、歯周病・歯肉炎や膝蓋骨脱臼、白内障、糖尿病などの請求割合が犬全体を上回っています。

病気 トイプードル 犬全体
歯周病・歯肉炎 5.9% 3.8%
膝蓋骨脱臼 2.1% 1.7%
白内障 1.8% 1.0%
糖尿病 0.8% 0.4%
膵炎 1.2% 0.8%
胆泥症 2.1% 1.3%

これらは保険請求があった犬の割合であり、実際に病気を発症する確率や、生涯で病気にかかる割合を示したものではありません。

また、請求割合が高い病気ほど重症化しやすいという意味でもありません。病気ごとの特徴や症状を理解し、必要な検査や治療につなげることが重要です。

出典:アニコム「家庭どうぶつ白書2025」

トイプードルの骨・関節の病気とケガ

芝生の上を歩いているトイプードル

トイプードルの足腰で特に注意したいのが、膝蓋骨脱臼とレッグ・カルベ・ペルテス病です。

また、小柄な体格の犬では、転落や強い衝撃による骨折にも注意が必要です。

片足を上げる、歩き方が不自然になる、段差を嫌がるといった変化は、関節や骨に異常が生じているサインかもしれません。

膝蓋骨脱臼(パテラ)

膝蓋骨脱臼は、膝のお皿にあたる膝蓋骨が、正常な位置から内側または外側へずれてしまう病気です。通称「パテラ」とも呼ばれます。

トイプードルでは特に内側への脱臼が知られており、骨や関節の発育に関係する構造的な要因が発症に関わります。

主な症状は、後ろ足を突然持ち上げる、数歩だけスキップするように歩く、足を伸ばしたあとに普通に歩き始めるなどです。

軽度では症状がほとんど現れないこともありますが、重度になると膝が曲がった状態になったり、常に足を引きずったりすることがあります。

診断は膝蓋骨の位置や動きを触診で確認し、必要に応じてレントゲン検査を行います。重症度は一般的にグレード1〜4に分類されます。

症状が軽い場合は、体重管理や運動量の調整、痛みの管理などで経過を観察することがあります。

一方、脱臼が重度の場合や歩行障害が続く場合には、膝蓋骨が正常に動くように関節の構造を整える手術が検討されます。

保存的な管理では骨格そのものの異常は治せないため、症状が一時的に消えても、状態を定期的に確認することが大切です。

骨折

骨折は、骨が折れたり、ひびが入ったりするケガです。トイプードルでも、高い場所からの転落やジャンプの着地失敗、踏みつけなどによって起こることがあります。

特に小型犬では、前足の橈骨と尺骨という2本の骨を骨折することがあり、治療に注意を要する場合があります。

骨折すると、突然足を地面につけなくなる、触ると強く痛がる、患部が腫れる、足の向きが不自然になるなどの症状が現れます。

ただし、外見だけでは骨折と脱臼、靱帯損傷などを区別できません。動物病院ではレントゲン検査などで骨折の位置や状態を確認し、骨のずれや犬の年齢に応じて治療方法を決めます。

骨折の種類によってはギプスや副木で固定することもありますが、プレートやピンを用いた手術が必要になる場合もあります。

骨折が疑われる場合は、無理に足を動かしたり、自分で固定しようとしたりせず、できるだけ動かさない状態で速やかに受診してください。

レッグ・カルベ・ペルテス病

レッグ・カルベ・ペルテス病は、太ももの骨の先端にある大腿骨頭への血液供給が障害され、骨が壊れて変形していく病気です。

主に成長期の小型犬に発症し、生後4〜11か月ごろに認められることがあります。トイプードルも関連が知られている犬種のひとつです。

主な症状は、後ろ足を引きずる、歩くときに痛がる、運動を嫌がる、太ももの筋肉が細くなるなどです。徐々に悪化することが多く、股関節を動かしたときに痛みが現れる場合があります。

診断では歩行状態や股関節の動きを確認し、レントゲン検査で大腿骨頭の変形や骨の異常を調べます。

治療では、傷んだ大腿骨頭と頸部を切除する手術が一般的に行われます。手術後は、足の機能を回復させるためのリハビリテーションも重要です。

子犬が後ろ足をかばって歩いている場合は、単なる成長期の変化と考えず、早めに診察を受けましょう。

トイプードルの耳・皮膚・歯の病気

獣医師に薬を点耳されているトイプードル

トイプードルでは、外耳炎、皮膚炎、歯周病などにも注意が必要です。

耳や皮膚の病気は、かゆみや赤み、においなどから気づける場合があります。一方、歯周病は口の中で進行するため、飼い主が異常を見逃しやすい病気です。

なお、外耳炎や皮膚炎は犬全般に見られる疾患であり、トイプードルがすべての耳・皮膚疾患にかかりやすいわけではありません。

外耳炎

外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの外耳道に炎症が起こる病気です。

トイプードルは垂れ耳で、耳の中にも毛が生えやすい特徴がありますが、外耳炎は耳の形だけで発症するものではありません。

アレルギーや異物、耳ダニなどが原因となるほか、細菌やマラセチアという酵母の増殖が炎症を悪化させることがあります。

主な症状は、耳を頻繁にかく、頭を振る、耳が赤くなる、耳垢が増える、普段と異なるにおいがするなどです。進行すると耳に強い痛みが生じ、触られることを嫌がる場合もあります。

診断では耳鏡で耳の中を観察し、耳垢を顕微鏡で調べる検査などを行います。

治療は原因に応じた点耳薬や洗浄、炎症の管理が中心です。アレルギーなどの原因が残っていると再発しやすいため、根本的な問題への対応も必要になります。

皮膚炎・アレルギー性皮膚炎

皮膚炎は、皮膚に赤みやかゆみ、湿疹などの炎症が起こる状態です。

原因は、細菌やマラセチアの増殖、寄生虫、アレルギー、皮膚への刺激などさまざまです。アレルギー性皮膚炎には、環境中の物質などが関わるアトピー性皮膚炎や、食物に対するアレルギー反応による皮膚炎などがあります。

主な症状は、体を頻繁にかく、足先をなめ続ける、顔をこする、皮膚が赤くなる、脱毛するなどです。かゆみが続くことで皮膚を傷つけ、二次的な細菌感染を起こす場合もあります。

診断では皮膚の状態や症状の経過を確認し、皮膚検査や寄生虫の確認、必要に応じた食事試験などを行います。

治療は原因によって異なり、かゆみを抑える薬の投与や感染症の治療、皮膚の保湿、食事管理などを組み合わせます。

なお、トイプードルで皮膚疾患全般の発症リスクがほかの犬種より高いと断定することはできません。

歯周病

歯周病は、歯垢に含まれる細菌などによって、歯茎や歯を支える組織に炎症が起こる病気です。

初期には歯肉炎として歯茎が赤くなり、進行すると歯を支える骨が失われ、歯のぐらつきや脱落につながることがあります。

トイプードルでは、アニコムの保険請求データでも歯周病・歯肉炎の割合が犬全体を上回っています。

主な症状は口臭、歯石の付着、歯茎の赤みや出血、硬い食べ物を嫌がる、口元を触られることを嫌がるなどです。

歯周病が進んでも普段どおりに食事をする犬がいるため、食欲があるだけでは健康な歯とは判断できません。

診断では口腔内を観察し、必要に応じて麻酔下で歯周ポケットの深さや歯科用レントゲン検査による骨の状態を確認します。

治療では歯石除去や歯周ポケット内の清掃を行い、状態によっては抜歯が必要になります。

歯周病を防ぐには、犬用歯ブラシなどを使った毎日の歯磨きが重要です。すでに痛みや出血がある場合は、無理に磨かず診察を受けてください。

トイプードルの目の病気

飼い主と見つめあうトイプードル

トイプードルの目で注意したい病気には、白内障や進行性網膜萎縮症(PRA)があります。どちらも視力に影響する病気ですが、原因や治療方法は異なります。

また、涙が過剰にあふれる流涙症も見られます。涙やけだけの問題なのか、目に異常があるのかを確認することが大切です。

白内障

白内障は、目の中でレンズの役割をする水晶体が白く濁る病気です。

水晶体の濁りが進むと光が網膜に届きにくくなり、視力が低下します。重度になると、物がほとんど見えなくなる場合もあります。

原因には、遺伝的な要因、加齢、糖尿病、目の炎症などがあります。

主な症状は、瞳の奥が白っぽく見える、物にぶつかる、段差を怖がる、暗い場所で動きにくくなるなどです。

高齢犬で水晶体が青白く見える核硬化症は、白内障とは異なる変化です。ただし、見た目だけで区別することはできません。

診断では、眼科検査で水晶体の状態を確認し、必要に応じて網膜の機能や眼圧なども調べます。

白内障による視力低下に対しては、濁った水晶体を取り除く手術が治療の選択肢になります。一方、点眼薬などによる管理は、白内障そのものを元に戻す治療ではありません。

治療方針は進行度や目のほかの病気、全身状態によって変わるため、早めに眼科検査を受けることが重要です。

進行性網膜萎縮症(PRA)

進行性網膜萎縮症(PRA)は、目の奥にある網膜の細胞が徐々に機能を失い、視力が低下していく遺伝性疾患の総称です。トイプードルでは、prcd-PRAと呼ばれるタイプが知られています。

初期には暗い場所で物が見えにくくなる夜盲が現れ、進行すると明るい場所でも視力が低下していきます。

散歩中に障害物を避けにくくなる、暗い部屋に入るのを嫌がる、家具にぶつかるなどの変化が見られることもあります。

診断では眼底検査で網膜の状態を確認し、必要に応じて網膜電図という検査で網膜の働きを調べます。

prcd-PRAについては原因となる遺伝子変異を調べる検査もありますが、この検査ですべてのPRAを除外できるわけではありません。

現在、失われた網膜の機能を回復させる確立された治療法はありません。そのため、視力の状態を把握し、家具の配置を大きく変えない、危険な段差を避けるなど、生活環境を整えることが重要です。

流涙症

流涙症は、涙が過剰に産生されたり、正常に排出されないことで、目からあふれてしまう状態です。

涙の排出経路である鼻涙管が狭くなったり、詰まったりするほか、結膜炎や角膜の傷、まつ毛の異常などによって涙の分泌が増える場合もあります。

主な症状は、目の下が常に濡れている、目元の毛が赤茶色に変色する、目の周囲の皮膚が荒れるなどです。

目元の毛が赤茶色になる「涙やけ」は、涙による被毛の変色を指す言葉であり、それ自体が独立した病名ではありません。

診断では目の表面やまぶた、涙の排出経路などを確認します。必要に応じて角膜の検査や鼻涙管の通過性を調べる検査を行います。

治療は原因によって異なり、炎症の治療や鼻涙管の洗浄、まつ毛の異常への対応などが行われます。日常的には目の周囲を清潔に保ち、濡れた毛をやさしく拭き取ることが大切です。

ただし、充血や痛み、目を開けにくそうにする症状がある場合は、単なる涙やけとして放置しないでください。

トイプードルの内臓・ホルモンの病気

床に伏せているトイプードル

トイプードルでは、胃腸炎などの消化器疾患に加え、糖尿病、膵炎、胆泥症といった病気にも注意が必要です。

また、ホルモンの分泌異常によるクッシング症候群や甲状腺機能低下症が起こる場合もあります。

嘔吐や下痢、食欲の変化だけでなく、飲水量や尿量、体重の変化も病気に気づく重要な手がかりです。

胃腸炎

胃腸炎は、胃や腸に炎症が起こり、消化器の働きに異常が生じる病気です。

原因はさまざまで、食事の急な変更、傷んだ食べ物の摂取、細菌や寄生虫による感染症などが関係することがあります。

主な症状は、嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛、元気の低下などです。重症になると、脱水や電解質異常を起こす場合もあります。

ただし、嘔吐や下痢は胃腸炎以外にも、異物の誤飲、膵炎、内分泌疾患などで現れます。

診断では食事内容や症状の経過を確認し、必要に応じて便検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを行います。

治療は原因によって異なりますが、脱水を補う輸液や吐き気を抑える薬の投与、消化しやすい食事による管理などが行われます。

特に子犬や高齢犬では体調が急激に悪化することもあるため、嘔吐や下痢が繰り返される場合は早めに受診することが大切です。

糖尿病

糖尿病は、血糖値を調節するインスリンというホルモンが不足するなどして、血糖値が高くなる病気です。

犬ではインスリンの分泌不足が中心となることが多く、慢性膵炎やホルモンの異常などが関係する場合もあります。

主な症状は、水を飲む量が増える、尿量が増える、食欲があるのに体重が減る、元気がなくなるなどです。糖尿病が進行すると、白内障が起こる場合もあります。

さらに、糖尿病性ケトアシドーシスという重い状態になると、嘔吐や食欲不振、著しい衰弱、意識障害などが現れ、緊急治療が必要になります。

診断では血液検査と尿検査を行い、持続的な高血糖や尿糖などを確認します。

犬の糖尿病では、インスリン注射、食事管理、定期的な血糖測定などによる継続的な治療が基本です。食事と注射のタイミングを一定に保ち、飲水量や尿量、体重の変化を確認することが重要になります。

なお、糖尿病は特定の食品を食べたことだけで発症する病気ではありません。複数の要因が関係するため、原因を単純化しないことが大切です。

膵炎

膵炎は、消化酵素などを分泌する膵臓に炎症が起こる病気です。

原因がはっきりしない場合もありますが、高脂肪の食事や高トリグリセリド血症、ほかの病気などがリスクに関係することがあります。

主な症状は、嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、元気の低下などです。腹痛が強い場合は、前足を伸ばして胸を床に近づけ、お尻を高く上げるような姿勢を取ることもあります。

診断では、症状の確認や身体検査の結果に加えて、体内の炎症反応や膵臓に関連する項目を含めた血液検査、腹部超音波検査などを組み合わせます。

治療は輸液、痛みや吐き気の管理、栄養管理などが中心です。状態に応じて低脂肪食を取り入れる場合もあります。

重症化すると全身に炎症が広がり、臓器の機能に影響することがあるため、強い腹痛や繰り返す嘔吐、著しい元気の低下がある場合は速やかな受診が必要です。

胆泥症

胆泥症は、胆嚢に蓄えられている胆汁の成分が濃くなり、泥状の物質がたまる状態です。健康診断などで行う腹部超音波検査によって、症状がないまま偶然発見されることもあります。

胆泥が見つかったからといって、必ずしも病気が進行しているわけではなく、すべての犬に治療が必要になるものでもありません。

一方、胆嚢の炎症や胆汁の流れの異常を伴う場合には、食欲不振、嘔吐、腹痛などが現れることがあります。胆道の閉塞などが起きると、皮膚や白目が黄色く見える黄疸が現れる場合もあります。

診断では、腹部超音波検査で胆泥の状態や胆嚢壁の変化を確認し、必要に応じて血液検査で肝臓や胆道の状態を調べます。

治療は症状や検査結果によって異なり、経過観察、内科的な管理、原因疾患の治療などが検討されます。胆嚢粘液嚢腫や胆道閉塞などの重い異常が疑われる場合は、手術が必要になることもあります。

無症状でも胆泥の性状が変化する場合があるため、再検査の必要性や間隔を獣医師と相談することが大切です。

クッシング症候群

クッシング症候群は、副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰になることで、全身にさまざまな異常が生じる病気です。

原因には、脳の下垂体の異常や副腎の腫瘍などがあります。また、ステロイド薬の長期使用によって、似た状態が生じる場合もあります。

主な症状は、水を大量に飲む、尿量が増える、食欲が増す、お腹が膨らむ、筋肉が弱くなる、左右対称の脱毛が現れるなどです。症状が徐々に進むこともあり、加齢による変化と間違えられる場合があります。

診断では血液検査や尿検査に加え、ACTH刺激試験や低用量デキサメタゾン抑制試験など、ホルモンの働きを調べる検査を行います。

治療は原因によって異なり、ホルモンの産生を抑える薬による治療や、副腎腫瘍に対する手術などが検討されます。

なお、国内の発症率に関するデータは十分ではありませんが、トイプードルはクッシング症候群の好発犬種として知られているため注意が必要です。

また、甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症にも要注意です。甲状腺機能低下症では、元気の低下、体重増加、脱毛、皮膚の乾燥などが現れます。

診断には症状の確認と甲状腺ホルモンの検査などが必要で、治療にはホルモンを補う薬が使用されます。

トイプードルの心臓・呼吸器の病気

獣医師に聴診されているトイプードル

トイプードルを含む小型犬では、心臓の弁に異常が生じる僧帽弁閉鎖不全症や、気管が狭くなる気管虚脱にも注意が必要です。これらはトイプードルだけに起こる病気ではありません。

咳や呼吸の変化、運動を嫌がる様子などが見られた場合は、原因を確認する必要があります。

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が正常に閉じなくなり、血液の一部が逆流する病気です。

小型犬では、加齢に伴って弁が変性することで発症するケースが多く見られます。

初期には目立った症状がなく、健康診断の聴診で心雑音が見つかることがあります。病気が進行すると、疲れやすい、散歩を嫌がる、咳が出る、呼吸が速くなるなどの症状が現れます。

さらに心不全を起こすと、肺に水分がたまる肺水腫が生じ、呼吸困難に陥ることがあります。

診断では聴診に加えて、胸部レントゲン検査や心臓超音波検査などを行い、弁の状態や心臓の大きさを調べます。

治療は進行度によって異なります。無症状で心臓の拡大が認められない段階では経過観察となる場合があり、一定以上の心拡大がある場合には薬による治療が検討されます。

心不全を起こしている場合は、利尿薬などを使用して呼吸状態を改善する治療が必要です。

心雑音があるからといって必ず心不全になるわけではありませんが、定期的な検査で進行状態を把握することが重要です。

気管虚脱

気管虚脱は、空気の通り道である気管を支える軟骨が弱くなるなどして、気管が扁平につぶれ、空気が通りにくくなる病気です。

特に小型犬で見られ、トイプードルでも注意したい呼吸器疾患のひとつです。

代表的な症状は、ガーガーというガチョウの鳴き声に似た咳です。興奮時や運動時、暑い環境などで症状が悪化することがあります。

重症になると呼吸が苦しくなり、舌や歯茎が青紫色になるチアノーゼや、失神が見られる場合があります。

診断では症状を確認し、胸部レントゲン検査や、呼吸に伴う気管の動きを観察する透視検査などを行います。

治療では、体重管理や興奮を避ける環境づくり、咳を抑える薬などによる管理が行われます。内科的な治療で十分に改善しない重症例では、気管を支えるステントの設置などが検討される場合もあります。

ただし、咳は心臓病や気管支炎などでも起こります。咳の音だけで気管虚脱と決めつけず、原因を調べることが大切です。

病気のサインと受診の目安

ブランケットの上で伏せているトイプードル

トイプードルの体調に異常が見られた場合は、症状の強さだけでなく、呼吸状態、意識、食欲、歩行状態、症状の繰り返しなどを確認することが重要です。軽い症状に見えても、病気が進行している場合があります。

特に呼吸困難や意識障害などは緊急性が高いため、様子を見ることよりも速やかな受診を優先してください。

すぐに受診・相談したい症状と状況

呼吸が明らかに苦しそうな場合や、安静にしていても口を開けて激しく呼吸している場合、舌や歯茎が青紫色になっている場合は、緊急性が高い状態です。

また、意識がない、呼びかけに反応しない、けいれんが続く、短時間に何度もけいれんを起こす場合も、すぐに動物病院へ連絡してください。

高い場所から落ちたあとに動けない、強い痛みがある、大量の出血があるといった重い外傷も緊急対応が必要です。

急に物が見えなくなったように感じられる場合や、目を強く痛がって開けられない場合も、早急な眼科的評価が必要になります。

さらに、嘔吐や下痢に加えて著しく衰弱している、立てない、反応が鈍いなどの状態も危険です。

誤飲や中毒の疑いがある場合は、症状が現れていなくても速やかに動物病院へ連絡してください。何を、どのくらい、いつ食べた可能性があるのかを伝え、包装や残っている物があれば確認できるようにしておきます。

自己判断で吐かせたり、塩や薬を飲ませたりすることは危険です。獣医師から指示を受けるまでは行わないでください。

早めに獣医師へ相談したい症状

緊急性が高い症状でなくても、普段と異なる状態が続いたり、繰り返されたりする場合には、早めに動物病院へ相談することが大切です。

例えば、散歩中に何度も片足を上げる、以前より段差を嫌がる、歩き方が変わったといった症状は、関節や骨に問題がある可能性があります。

咳が繰り返される、夜間や安静時にも咳が出る、以前より呼吸が速いといった変化も、心臓や呼吸器の検査を考えるきっかけになります。

また、水を飲む量や尿量が明らかに増えた、食事量が変わらないのに体重が減るといった変化は、糖尿病やホルモンの病気などで見られることがあります。

耳のにおいが強くなる、皮膚をしきりになめる、目やにや涙が増える、口臭が強くなるなどの変化も見逃さないようにしましょう。

受診する際には、症状が始まった時期、起こる頻度、食欲や飲水量、便や尿の状態などを記録しておくと役立ちます。

歩き方や咳、呼吸の異常などは、可能であれば動画に残しておくことで、診察時に症状を伝えやすくなります。

子犬・シニア犬で注意したい病気

遠くを見つめるトイプードルのシニア犬

トイプードルは、成長段階によって注意したい健康問題が異なります。子犬では、成長期の骨・関節の異常や低血糖などに気をつける必要があります。

一方、シニア犬では心臓病や糖尿病、白内障などのほか、加齢に伴う体力や感覚機能の変化にも注意が必要です。

子犬で注意したい病気と症状

トイプードルの子犬では、膝蓋骨脱臼やレッグ・カルベ・ペルテス病など、成長期に発見されることがある病気に注意が必要です。

歩き方がおかしい、足を痛がる、運動を嫌がるといった変化があれば、早めに診察を受けてください。

また、体の小さな子犬では低血糖にも注意が必要です。低血糖は血液中のブドウ糖が不足する状態で、食事を十分に取れない場合などに起こることがあります。

主な症状は、元気がなくなる、ふらつく、震える、ぐったりするなどです。重症になると、けいれんや意識障害を起こすことがあります。

特に小柄な子犬では、長時間食事を取れない状況を避け、成長段階に合った食事を適切な回数に分けて与えることが大切です。

低血糖が疑われる症状がある場合は緊急性があるため、速やかに動物病院へ連絡してください。

シニア犬で注意したい病気と症状

シニア期のトイプードルでは、僧帽弁閉鎖不全症、白内障、糖尿病、歯周病などの健康問題に注意が必要です。

年齢を重ねると、運動量が減ったり、眠る時間が増えたりすることがありますが、すべてを加齢による変化と考えるのは適切ではありません。

以前より散歩を嫌がる、疲れやすくなる、物にぶつかる、飲水量が増える、体重が減るといった変化は病気のサインかもしれません。

また、筋肉量が減ることで足腰の機能が低下し、転倒やケガの危険が高まる場合もあります。

食事量や飲水量、体重、歩行状態、呼吸の変化を確認し、普段との違いがあれば相談しましょう。

なお、アニコムの統計では12歳までの犬が対象になっていますが、12歳が病気の発症のピークという意味ではありません。

トイプードルの健康管理と病気の早期発見

食器からフードを食べているトイプードル

トイプードルの健康を守るには、体重管理、生活環境の整備、耳や皮膚、歯の日常ケア、定期的な健康診断が重要です。

ただし、すべての病気を予防できるわけではありません。予防できる問題を減らすこと、病気の悪化を防ぐこと、異常を早期に発見することを意識して健康管理を行いましょう。

体重管理と足腰への負担軽減

適切な体重を維持することは、膝や股関節への負担を減らし、全身の健康を保つために大切です。

トイプードルの適正体重は骨格や体格によって異なるため、体重の数値だけで太りすぎかどうかを判断することはできません。体型の確認には、ボディコンディションスコア(BCS)が役立ちます。

BCSは体脂肪のつき方を評価する方法で、肋骨の触れやすさや腰のくびれ、お腹の形などから体型を確認します。一般的な9段階評価では、4〜5が理想的な体型の目安とされています。

食事やおやつは必要なエネルギー量を考えて調整し、定期的に体重を測って変化を確認しましょう。

また、滑りやすいフローリングにはマットを敷き、ソファやベッドから飛び降りないように環境を整えることも重要です。

階段や高い場所からの転落にも注意し、必要に応じて柵やスロープなどを設置するとよいでしょう。

ただし、運動を過度に制限する必要はありません。健康状態に合わせて散歩や遊びを取り入れ、筋力や体力を維持することも大切です。

耳・皮膚・歯の日常ケア

耳や皮膚、歯の状態を日常的に確認することは、病気の早期発見につながります。

耳は、赤みや異臭、耳垢の増加がないか確認します。汚れが気になる場合でも、綿棒を奥まで入れたり、強くこすったりしないようにしてください。

耳の洗浄は、耳の状態に合わせた方法や頻度で行うことが大切です。異常がある場合は、獣医師の診察を受けましょう。

皮膚はブラッシングの際に、赤みや湿疹、脱毛、しこりなどがないか確認します。

トイプードルは巻き毛で毛玉ができやすいため、被毛を清潔に保ち、皮膚の状態を確認しやすくしておくことも役立ちます。

歯はできるだけ毎日磨き、歯垢がたまらないように管理します。歯ブラシに慣れていない場合は、口元を触る練習から始め、無理のない範囲で少しずつ進めましょう。

口臭や歯茎の出血、歯のぐらつきがある場合は、歯磨きだけで改善しようとせず、動物病院で確認してもらうことが必要です。

定期健診と遺伝性疾患への備え

定期的な健康診断は、症状が現れる前の病気や、飼い主が気づきにくい異常を発見する機会になります。

診察では、体重や体型、心音、歯や耳、皮膚、関節の状態などを確認できます。年齢や症状、これまでの病歴によっては、血液検査や尿検査、眼科検査、心臓超音波検査などを組み合わせることがあります。

また、トイプードルでは膝蓋骨脱臼やPRAなど、犬種との関連が知られている疾患にも注意が必要です。

PRAの一部については遺伝子検査で特定の変異を確認できますが、検査結果が正常でも、すべての眼疾患やほかのタイプのPRAが否定されるわけではありません。

米国のPoodle Club of Americaでは、繁殖犬を対象として、prcd-PRAの遺伝子検査や眼科検査、膝蓋骨の評価などを推奨しています。

ただし、これは主に繁殖に用いる犬の健康評価を目的としたものであり、すべての家庭犬に同じ検査を同じ頻度で受けさせるという基準ではありません。

愛犬の年齢や健康状態、家系に関する情報などを踏まえ、必要な検査を獣医師と相談することが大切です。

病気の治療費とペット保険

動物病院で支払いをする飼い主とトイプードル

トイプードルの病気の治療費は、疾患の種類や重症度、検査内容、通院・入院の有無などによって大きく異なります。

例えば、膝蓋骨脱臼や骨折では手術が必要になる場合があり、糖尿病や心臓病などでは長期的な治療が必要になることがあります。

アニコム「家庭どうぶつ白書2025」には、トイプードルの疾患別年間診療費について、平均値と中央値が掲載されています。

病気 年間診療費の平均値 年間診療費の中央値
歯周病・歯肉炎 62,599円 51,024円
膝蓋骨脱臼 80,828円 12,430円
白内障 68,564円 20,020円
糖尿病 222,394円 175,303円
膵炎 93,280円 58,848円

平均値は診療費の合計を対象頭数で割った数値で、中央値は診療費を低い順に並べたときの中央の値です。

例えば、膝蓋骨脱臼では平均値と中央値に大きな差があります。これは診療費にばらつきがあることを示しています。

ただし、表の数値は年間診療費の統計であり、手術1回の費用や、個々の犬が今後支払う治療費を示したものではありません。また、実際の診療費は病院や治療方法によっても異なります。

病気への備えとしては、ペット保険への加入や、急な医療費に対応できる資金の確保などが考えられます。

ペット保険を検討する場合は、保険料だけでなく、補償対象となる病気、通院・入院・手術の補償範囲、支払限度額、免責事項などを確認することが重要です。

すでに診断されている病気や加入前からの症状については、補償対象外となる場合もあります。

まとめ

体温計を持つ獣医師と診察台の上に座るトイプードル

トイプードルはあらゆる病気に弱い犬種ではありませんが、膝蓋骨脱臼、歯周病、白内障、糖尿病、膵炎など、特に注意したい病気があります。また、進行性網膜萎縮症(PRA)などの遺伝性疾患や、小型犬に共通する骨折、心臓病、気管虚脱にも気を配る必要があります。

病気の早期発見には、普段から歩き方や食欲、飲水量、体重、呼吸、目や耳、口の状態を確認することが重要です。

呼吸困難や意識障害、重い外傷などがある場合は、速やかに動物病院を受診してください。誤飲や中毒が疑われる場合も、症状の有無にかかわらず早急な相談が必要です。

適切な体重管理や歯磨き、生活環境の整備、定期的な健康診断を続けることで、予防できる問題を減らし、病気の悪化防止や早期発見につなげましょう。