
パグの平均寿命は、12〜13歳前後をひとつの目安にするとよいでしょう。
アニコム損害保険の「家庭どうぶつ白書2025」では、2023年度のパグの平均寿命は12.6歳でした。同資料では、各年齢の契約頭数と死亡解約の届け出をもとに生命表を作成し、0歳時点の平均余命を「平均寿命」としています。
また、国内の動物霊園データを用いた研究では、パグ193頭の出生時平均余命は12.8歳、死亡年齢中央値は12.6歳でした。中央値とは、死亡年齢を順番に並べたときに中央に位置する値です。
この研究は、2012年1月〜2015年3月に東京都内8か所の動物霊園で埋葬・火葬された犬を対象としており、日本全国のパグを網羅した統計ではありません。
平均余命と死亡年齢中央値は異なる指標ですが、国内の複数のデータを踏まえると、パグの寿命を考える際は12〜13歳前後が現実的な目安になります。
なお、黒パグだけの平均寿命や、オス・メスそれぞれの平均寿命を設定できる十分な犬種別データは、少なくとも今回調査した国内の主要資料では確認できませんでした。
そして、「豆パグ」もジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準で認められた独立犬種やサイズ区分ではありません。JKCのパグの犬種標準では理想体重を6.3〜8.1kgとしており、小柄であることだけから寿命を予測することはできません。

同じ条件で比較すると、パグは犬全体や一部の小型犬より平均寿命が短めに位置する傾向があります。
ただし、すべての小型犬より短命というわけではなく、「小型犬のなかで最も短命」「極端に寿命が短い犬種」とまで捉えるのは適切ではありません。
「家庭どうぶつ白書2025」の2023年度データでは、犬全体の平均寿命は14.1歳、パグは12.6歳でした。
同じ生命表による主な小型犬の平均寿命と比較すると、次のようになります。
| 犬種 | 平均寿命 |
|---|---|
| 犬全体 | 14.1歳 |
| トイ・プードル | 15.3歳 |
| ミニチュア・ダックスフンド | 14.7歳 |
| シー・ズー | 14.0歳 |
| ミニチュア・シュナウザー | 13.4歳 |
| パグ | 12.6歳 |
| ボストン・テリア | 11.8歳 |
このデータでは、パグはトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンド、シー・ズーなどより短めです。一方、同じ小型犬に分類されるボストン・テリアは11.8歳で、パグより短い結果でした。
したがって、「小型犬は長寿だからパグも同程度」と考えるのではなく、犬種ごとの特徴を踏まえて寿命を見ることが大切です。
パグの健康を考えるうえで重要なのが、鼻先が短い「短頭種」であることです。
短頭種では、鼻孔や喉などの構造によって空気の通り道が狭くなり、呼吸に負担がかかることがあります。その代表的な問題が、短頭種気道症候群(BOAS)です。
英国のVetCompassデータを用いた研究では、パグはパグ以外の犬と比べてBOASと診断されるオッズが約54倍でした。これは英国の診療データによる結果ですが、パグがBOASに対して強い犬種素因を持つことを示す資料のひとつです。
また、短頭種では呼吸による体温調節が難しくなる場合があり、高温多湿な環境や激しい運動によって負担が大きくなることがあります。
ただし、短頭種であることだけで寿命が決まるわけではありません。神経疾患などほかの健康問題もあり、BOASのみをパグの平均寿命が短めである原因と断定することはできません。

国内研究で確認できるパグの長寿例としては、調査対象193頭のなかに19.0歳で死亡した犬が含まれていました。
平均余命が12.8歳だった集団のなかでも、19歳まで生きた例が実際に確認されていることになります。
ただし、19.0歳はあくまでこの研究の調査対象内で確認された最高死亡年齢です。「パグの歴代最高齢」や「世界最高齢のパグ」を認定した記録ではありません。
インターネット上では20歳以上のパグに関する情報が紹介されることもありますが、原典や記録方法を確認できない情報を公式な最高齢として扱うことは避ける必要があります。
平均寿命も最高齢も、個々のパグが何歳まで生きるかを決める数字ではありません。遺伝的背景や病気、体格、生活環境などによって寿命には幅があります。

犬の年齢を人間年齢に換算する方法は、ライフステージをイメージするための目安です。
単純に「犬の1歳=人間の7歳」と計算する方法では、犬が若齢期に急速に成長することや、犬種・体格による老化速度の違いを十分に反映できません。
アメリカ獣医師会(AVMA)が示す換算資料を参考にすると、犬は1歳で人間の約15歳、2歳で約24歳に相当するとされています。
その後の換算も含めた代表的な年齢の目安は次の通りです。
| 犬の年齢 | 人間年齢の目安 |
|---|---|
| 1歳 | 約15歳 |
| 2歳 | 約24歳 |
| 5歳 | 約36歳 |
| 7歳 | 約44歳 |
| 9歳 | 約52歳 |
| 10歳 | 約56歳 |
| 12歳 | 約64歳 |
| 13歳 | 約68歳 |
| 15歳 | 約76歳 |
この換算はパグ専用に作られたものではなく、あくまで目安です。同じ年齢でも、健康状態や体格、犬種によって身体的な老化の進み方は異なります。
パグでは、9〜10歳頃からシニア期を意識して、体調の変化を丁寧に確認していくとよいでしょう。
アメリカ動物病院協会(AAHA)の犬のライフステージに関するガイドラインでは、推定寿命の最後の25%に入った時期からを「シニア」と定義しています。
パグの平均寿命を12〜13歳前後として便宜的に当てはめると、9〜10歳前後がひとつの目安になります。
ただし、これはパグが一律に9歳から老犬になるという意味ではありません。体力や持病、呼吸状態などによって変化の現れ方は異なるため、年齢だけではなく普段の状態と合わせて考えることが大切です。

パグには犬種として注意したい病気がありますが、「かかりやすい病気」と「実際に死亡原因となりやすい病気」は同じではありません。
ここでは病気を網羅するのではなく、パグの生命や健康寿命を考えるうえで特に重要な短頭種気道症候群、壊死性髄膜脳炎と、死亡例研究で報告された死因について取り上げます。
短頭種気道症候群(BOAS)は、鼻孔が狭い、軟口蓋が長いなど、短頭種にみられる上気道の構造的な問題によって呼吸が妨げられる状態です。
パグでは特に重要な健康問題で、英国の大規模診療データを用いた研究では、パグ以外の犬と比較してBOASと診断されるオッズが約54倍でした。
さらに、オーストラリアのVetCompassを用いたパグの死亡例研究では、死因について診断情報が得られた491頭のうち、BOASは8.2%を占め、最も多い具体的な死因でした。
これはオーストラリアの診療データであり、日本のパグでも8.2%がBOASで死亡するという意味ではありません。しかし、BOASがパグの生命や健康を考えるうえで無視できない疾患であることを示しています。
呼吸音が大きい、運動すると極端に息が乱れる、以前より運動を続けられないといった変化があれば、単に「パグだから」と考えず動物病院へ相談しましょう。
舌や歯ぐきが青紫色になる、呼吸困難に陥っている、倒れるといった状態は酸素不足を伴い、緊急性が高い可能性があるため、直ちに受診が必要です。
壊死性髄膜脳炎(NME)は、脳に強い炎症と組織の壊死が起こる神経疾患で、「パグ脳炎」と呼ばれることもあります。
NMEはほかの小型犬でも報告されていますが、パグでは犬種素因がよく知られています。遺伝学的研究では、犬白血球抗原(DLA)に関連する領域など、発症リスクと関わる遺伝的要因が確認されています。
症状としては、けいれん発作のほか、ふらつき、同じ方向へ回る、視覚の異常、行動の変化などがみられることがあります。ただし、これらの症状だけからNMEと判断することはできません。
「発症したらあと何日生きられるのか」と不安になる飼い主もいるでしょう。過去のパグ58頭を対象とした研究では、生存期間中央値は23日と報告されましたが、これは特定の時期・症例群における研究結果です。
治療法や症例ごとの病状には違いがあるため、この数字を現在の個々の犬の固定的な余命として当てはめることはできません。
初めてのけいれん発作や、急なふらつき、意識や行動の明らかな変化などがある場合は、早めに獣医師の診察を受けることが大切です。
パグの死因について参考になる研究として、オーストラリアの一次診療データを用いたVetCompass研究があります。
同研究では7,909頭のパグを含む診療記録から死亡した691頭を調査し、死因について診断情報が得られた491頭では、具体的な死因として短頭種気道症候群が8.2%、けいれんが6.7%、変性性の脊髄疾患が4.7%でした。
この結果はオーストラリアの犬を対象としたもので、日本国内のパグの死因割合としてそのまま使用することはできません。
また、「けいれん」は症状・死因カテゴリーであり、壊死性髄膜脳炎と同じ意味ではありません。てんかんをはじめ複数の原因でけいれんが起こるため、「パグのけいれんによる死亡=パグ脳炎」と解釈しないことが重要です。

特定の方法を実践すれば、パグの寿命が必ず延びるというものではありません。
一方で、適正な体型を保つことや、短頭種に合わせて呼吸・暑さへ配慮すること、日常の変化を確認することは、身体への余分な負担を減らし、病気の早期発見につなげるために重要です。
パグの体型を管理するときは、体重の数字だけではなく、体脂肪のつき方も確認しましょう。
獣医療では、肋骨の触れやすさや上から見た腰のくびれ、横から見た腹部のラインなどから体型を評価する「ボディコンディションスコア(BCS)」が用いられます。
世界小動物獣医師会(WSAVA)では、9段階のBCSを使用する場合、多くの犬で4〜5程度を理想的な範囲としています。
パグの犬種標準では理想体重が6.3〜8.1kgとされていますが、この範囲に入っていれば必ず適正体型というわけではありません。骨格や筋肉量によって適切な体重は異なります。
食事だけでなく、おやつを含めた摂取量や日々の活動量も確認し、体重の増減が続く場合は獣医師に相談するとよいでしょう。
肥満がパグの寿命を短くする唯一の原因というわけではありませんが、余分な体重は呼吸や運動にかかる負担を大きくする可能性があります。
パグだから散歩や運動を控える必要があるわけではありません。健康状態に合った身体活動は、体重や筋力を維持するうえでも大切です。
ただし、短頭種では呼吸による熱の放散が効率的に行えない場合があるため、気温や湿度、呼吸状態を見ながら運動量を調整する必要があります。
暑さや湿度が高い日は涼しい時間帯や室内での活動へ切り替え、運動中に呼吸が大きく乱れている場合は、いつもの距離や時間をこなすことへ固執しないようにしましょう。
パグに共通する「何度までなら安全」「何分なら必ず大丈夫」という基準を設けることはできません。短頭種気道症候群の程度や年齢、体重、持病などによって負担は異なります。
以前より息切れしやすくなった、休んでも呼吸がなかなか落ち着かないなど、呼吸状態に変化がある場合には一度獣医師へ相談してください。
病気を早い段階で見つけるためには、日頃から愛犬の「いつもの状態」を把握しておくことが役立ちます。
パグでは呼吸の様子だけでなく、活動量、食欲、体重、歩き方などの変化を確認しておきましょう。小さな変化でも長く続いたり、徐々に悪化したりする場合には相談のきっかけになります。
また、見た目には元気でも、定期的に獣医師による健康診断を受けることが大切です。
AAHAでは、若齢~成犬期では6~12か月ごと、シニア期では少なくとも6か月ごとの健康状態の確認を重要とし、シニア期の犬では各種検査を含めた年1〜2回の獣医学的評価を得ることも検討するよう示しています。
ただし、必要な受診頻度や検査内容は年齢や持病、これまでの検査結果などによって異なります。すべてのパグに同じ検査スケジュールが必要という意味ではありません。

シニア期に入ったパグでは、若い頃とまったく同じ運動量や生活を維持することよりも、その時点の体力や呼吸状態に合わせることが重要です。
一方で、食欲や歩き方、呼吸などの変化をすべて「年を取ったから」と考えてしまうと、病気や痛みによる変化を見逃す可能性があります。
年齢を重ねるにつれて、休む時間が増える、歩くペースがゆっくりになる、以前ほど長時間遊ばなくなるといった緩やかな変化がみられることがあります。
ただし、老化そのものと病気による変化を家庭だけで明確に区別できるとは限りません。
AAHAのシニアケアガイドラインでも、元気の低下、食欲の変化、飲水量の変化、体重減少、行動や移動能力の変化などは、慢性疾患に伴ってみられることがあるとされています。
特に、突然起こった変化、短期間で急速に悪化する変化、食事や排泄、歩行など日常生活に支障が出るほどの変化は、「高齢だから仕方がない」と決めつけず、獣医師へ相談しましょう。
パグでは、以前より呼吸が苦しそうになった場合も年齢だけの問題とは限りません。呼吸状態の変化は早めに確認することが大切です。
シニア期の生活では、年齢だけで一律に活動を制限するのではなく、現在の体力、呼吸状態、体重、移動能力に合わせて負担を調整していきます。
散歩で疲れやすくなった場合は、まったく歩かせなくするのではなく、距離やペース、休憩の取り方を見直します。滑りやすい床で足を取られるようになった場合は、移動する場所の環境を整えることも役立ちます。
食事についても、「シニアになったから」という理由だけで急に量を減らすのではなく、体重や筋肉の状態を確認しながら調整することが大切です。
高齢になると寝ている時間が長くなることはありますが、ほとんど起き上がれない、食べられない、呼吸が苦しそうといった明らかな変化まで単なる老衰と判断するのは避けましょう。
その時点の状態を確認し、必要に応じて獣医師と相談しながら暮らし方を調整していくことが、シニア期のパグの生活の質を守ることにつながります。

パグの平均寿命は、国内データを踏まえると12〜13歳前後がひとつの目安です。同一条件のデータでは犬全体や一部の小型犬より短めですが、すべての小型犬より短命というわけではありません。
パグは短頭種気道症候群(BOAS)への強い犬種素因があり、壊死性髄膜脳炎など注意したい神経疾患もあります。しかし、特定の病気だけで寿命が決まるわけではありません。
適正な体型を保ち、呼吸状態や暑さに合わせて運動を調整し、普段との違いを確認することは健康管理の基本です。シニア期には明らかな変化をすべて老化と決めつけず、必要に応じて獣医師へ相談しましょう。
平均寿命は集団から算出された統計値であり、愛犬が何歳まで生きるかを決める期限ではありません。