シェパードの種類は?

首を傾げて正面を見つめるジャーマン・シェパード

日本で単に「シェパード」と呼ぶ場合、多くの方は警察犬や訓練犬としてなじみ深いジャーマン・シェパード・ドッグを思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、世界に目を向けると、犬種名に「シェパード」という言葉を含む犬は実に数多く存在しています。

英語の「Shepherd」はもともと「羊飼い」を意味する言葉であり、シェパードと名の付く犬種の多くは、羊をはじめとする家畜を誘導・管理する牧羊犬や牧畜犬、あるいは群れを外敵から守る護畜犬として、人と家畜の暮らしを支える仕事とともに発達してきました。

ただし、名前にシェパードが付いているからといって、すべての犬種が同じ系統や同じ役割を持っているわけではありません。

体の大きさや外見はもちろんのこと、性格傾向や被毛の質、得意とする仕事の内容には犬種ごとに非常に大きな違いが存在します。

また、「種類」という言葉が指す意味合いにも注意が必要です。たとえば、ベルジアン・シェパード・ドッグのように、1つの犬種の中に複数の公認バラエティー(タイプ)が存在するケースがあります。

一方で、ジャーマン・シェパードやオーストラリアン・シェパードなどで語られる「種類」は、毛色や被毛の長さ、あるいは繁殖目的(ワーキング系・ショー系など)の違いを指していることが多く、意味合いが異なります。

さらに、「黒いシェパード」や「白いシェパード」といった毛色から検索する方も少なくありませんが、同じ毛色を持つ全く別の犬種が存在するため、色だけで犬種を特定することはできません。

ここでは、シェパードという名を持つさまざまな犬たちの魅力や違いについて、詳しく紐解いていきましょう。

代表的なシェパード

並んで伏せる4匹のシェパード犬

まずは、シェパードの種類を調べる際に特に名前が挙がりやすく、世界中で広く知られている代表的な犬種をご紹介します。

それぞれの犬種について、ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準などを基準とした基本プロフィールとともに、ほかのシェパードと何が違うのかという特徴を明確に解説します。

ジャーマン・シェパード・ドッグ

日本で最も広く知られ、「シェパード」の代名詞とも言えるのがドイツ原産のジャーマン・シェパード・ドッグです。

体高はオスが60〜65cm、メスが55〜60cmで、体重はオスが30〜40kg、メスが22〜32kgほどの中・大型犬サイズに分類されます。

筋肉質で引き締まった体つきと大きな立ち耳が特徴的で、被毛は耐寒性に優れたダブルコート(上毛と下毛の二重構造)をまとっています。

毛色はブラック&タン(黒と茶)が最も有名ですが、オールブラック(単色)やグレーなども存在するため、黒いシェパードを探している方がこの犬種に辿り着くことも多くあります。

非常に高い知能と優れた訓練性能、深い忠誠心を持ち、もともとは牧羊犬として活躍していましたが、現在では警察犬、災害救助犬、盲導犬など多岐にわたる分野で能力を発揮しています。

ジャーマン・シェパードは独立した複数の公式バラエティーに分かれているわけではありませんが、短毛(スムース)と長毛(ロングヘアー)の違いや、実用性を重視したワーキング系、容姿の標準を重視したショー系といった系統の違いが「種類」として語られることがあります。

エネルギーに溢れ学習意欲が高いため、毎日の十分な運動と、頭を使う適切なトレーニングが不可欠な犬種です。

ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ

全身を覆う美しく豊かな白い被毛が目を引くのが、スイスを原産国とするホワイト・スイス・シェパード・ドッグです。

体高はオスが60〜66cm、メスが55〜61cm、体重はオスが30〜40kg、メスが25〜35kg程度の大型犬です。

歴史的にはジャーマン・シェパード・ドッグから派生した白い被毛の個体がルーツですが、現在は明確に独立した別の犬種として公認されています。

そのため、「ホワイトシェパード」という通称で親しまれているものの、単なる「白いジャーマン・シェパード」ではありません。

被毛は純白のダブルコートで、しっかりとした骨格を持ちながらも、どこかエレガントな雰囲気を漂わせています。

性格は比較的穏やかでフレンドリーな傾向があり、家族に対して非常に愛情深く、ジャーマン・シェパード譲りの高い洞察力と運動能力を兼ね備えています。

なお、世界には後述するようにほかにも白い被毛を持つシェパードが存在するため、白いからといって必ずしも本種であるとは限りません。

オーストラリアン・シェパード

オーストラリアン・シェパードは、その名称に反してオーストラリアではなくアメリカで発展を遂げた牧羊犬です。

体高はオスが51〜58cm、メスが46〜53cmで、体重は18〜30kg程度の中型犬に分類されます。

非常に筋肉質で運動神経に優れ、仕事への強い意欲と高い知能、そして飼い主への高い協調性を備えています。

大きな特徴の一つが多彩で美しい被毛で、ブルーマール、ブラック、レッドマール、レッドといったベースカラーに、ホワイトやタンのマーキングが入る多様な毛色が見られます。

オーストラリアン・シェパード自体に複数の公認サイズが存在するわけではなく、ネット検索などで見かける「種類」の多くは毛色や模様のバリエーションを指しています。

なお、非常によく似た外見を持つ小柄な犬として「ミニチュア・アメリカン・シェパード」が存在しますが、こちらは現在では独立した別犬種として扱われています。

ベルジアン・シェパード・ドッグ

ベルギー原産の作業犬であるベルジアン・シェパード・ドッグは、1つの犬種でありながら4つのバラエティー(タイプ)が存在することで知られています。

体高はオスが62cm前後(60〜66cm)、メスが58cm前後(56〜62cm)で、体重はオス・メスあわせて20〜30kg程度の中・大型サイズです。

4つのバラエティーは主に被毛の長さや質、毛色によって区別されており、長毛で漆黒の被毛を持つ「グローネンダール」、長毛でフォーンなどの毛色に黒いマスクを持つ「タービュレン」、短毛で精悍な「マリノア」、そして粗く硬い巻き毛を持つ「ラケノア」に分かれます。

近年、警察犬や軍用犬として世界的に高く評価されているマリノアも、独立した犬種ではなくベルジアン・シェパード・ドッグのバラエティーの1つです。

黒い長毛が魅力的なグローネンダールは、ブラックのジャーマン・シェパードと混同されることがありますが、体つきのシルエットや頭部のかたち、歴史的ルーツが異なる全く別の犬種です。

いずれのタイプも非常に高い活動性と知性を持ち、俊敏で作業意欲に満ちあふれています。

ダッチ・シェパード・ドッグ

オランダを原産とするダッチ・シェパード・ドッグは、かつて農場で家畜の移動や見張りなどあらゆる仕事をこなしてきた万能な牧畜犬です。

体高はオスが57〜62cm、メスが55〜60cmで、体重は20〜34kg程度の中・大型犬です。

非常に活発で賢く、耐久力に優れており、現在では警察犬や捜索救助犬としても活躍しています。

ジャーマンやベルジアンと体型が似ていますが、最大の特徴は「ブリンドル(虎斑)」と呼ばれる独特の斑紋パターンを持つ毛色です。

被毛のタイプによってショートヘアー(短毛)、ロングヘアー(長毛)、ラフヘアー(粗毛)の3つのバラエティーが存在します。

非常に実用的で訓練しやすい反面、豊富な運動量と知的刺激を必要とする本格的な作業犬種です。

珍しいシェパード

芝生の上に立つミニチュア・アメリカン・シェパード

前述の代表的な犬種以外にも、世界には大きさや外見、本来の役割が全く異なる珍しいシェパードが存在します。

日本国内で見かける機会は少ない犬種ばかりですが、ここではそれぞれの原産国や体格、気質などを解説します。

特に、飼い主の指示に従って家畜を誘導する「牧羊犬」と、人間の指示を待たず自らの判断で家畜を外敵(狼など)から守る「護畜犬」とでは、性格や扱い方が大きく異なる点に注目してください。

ミニチュア・アメリカン・シェパード

比較的小柄で扱いやすいサイズ感を持つのが、アメリカ原産のミニチュア・アメリカン・シェパードです。

体高はオスが35.5〜46cm、メスが33〜43.5cm、体重は9〜18kg程度と、中型〜小型寄りの体格をしています。

もともとは小型のオーストラリアン・シェパードをもとに作られ、かつては「ミニチュア・オーストラリアン・シェパード」と呼ばれていましたが、現在は独立した犬種として公認されています。

オーストラリアン・シェパード譲りの斑模様(マール)をはじめとする多彩な毛色、高い知能、運動能力、仕事への情熱をそのまま受け継いでいます。

コンパクトなサイズだからといって運動量が少ない初心者向きというわけではなく、活発でしっかりとした運動とトレーニングを必要とします。

コーカシアン・シェパード

コーカサス地域(ロシア、ジョージアなど)を原産とするコーカシアン・シェパードは、超大型の護畜犬です。

体高はオスで68cm以上(理想は72~75cm)、メスで62cm以上(理想は67~70cm)あり、体重はオスで50kg以上、メスで45kg以上、大型の個体では70kgを超えることもある非常に力強い犬種です。

クマや狼などの猛獣から家畜や領域を守るために発達したため、極めて頑丈な骨格と豊かな被毛、強い警戒心と独立心を備えています。

ジャーマン・シェパードのように人間の指示に細かく従うタイプではなく、自ら危険を判断して対処する性質が強く残っています。

そのため、一般家庭で飼育する場合には、力で抑え込むのではなく、幼少期からの念入りな社会化訓練と徹底した安全管理環境が絶対条件となります。

セントラル・アジア・シェパード・ドッグ

中央アジア地域で数千年の歴史を持つとされるセントラル・アジア・シェパード・ドッグも、威厳に満ちた大型護畜犬です。

体高はオスで最小70cm以上、メスで最小65cm以上、体重はオスメスともに40〜50kg以上にも達する重厚な体格を持ちます。

厳しい気候や過酷な環境に適応する強靭さと、驚異的な防衛能力を誇ります。

羊を誘導する一般的な牧羊犬のイメージとは異なり、家族や群れを守るための防衛本能が極めて強いため、飼育には犬種特性への深い理解が必要です。

カンガル・シェパード・ドッグ

トルコ原産のカンガル・シェパード・ドッグは、羊などの家畜を狼などの外敵から守るために用いられてきた歴史ある大型護畜犬です。

体高はオスが72〜78cm、メスが65〜73cm、体重はオスが48〜60kg、メスが40〜50kgほどで、強大な力と敏捷性を兼ね備えています。

かつては「アナトリアン・シェパード・ドッグ」という名称で一括りに扱われていた時期があり、資料によっては同義語として記載されている場合があります。

最新の国際的な犬種標準の改定等により、カンガル・シェパード・ドッグとしての地域的特性や統一規格が再定義されるなど、歴史的な変遷を持つ犬種です。

アブルッツォ・アンド・マレンマ・シェパード・ドッグ

イタリアのアブルッツォ地方やマレンマ地方を原産とする、全身が真っ白な毛で覆われた大型護畜犬です。

体高はオスが67〜73.5cm、メスが62〜70cm、体重はオスが40〜52kg、メスが35〜45kg程度となります。

羊の群れの中に溶け込み、敵と羊を見分けるために白い被毛が定着したとされています。

外見はホワイト・スイス・シェパード・ドッグと似ていますが、こちらは家畜を守る護畜犬としての歴史が長く、原産国や体型、気質も異なります。

白いシェパードの中にも、役割の異なる複数の犬種が存在することを示す良い例と言えます。

カルスト・シェパード・ドッグ

スロベニアのカルスト地方を原産とするカルスト・シェパード・ドッグは、古くから牧畜を守ってきた護畜犬です。

体高はオスが57〜63cm、メスが54〜60cm、体重は25〜42kg程度の中・大型犬です。

シルバー・グレーの美しい被毛とがっしりとした体格を持ち、誠実で警戒心が強い性格をしています。

世界的に見ても希少な犬種であり、日本国内で見かけることは滅多にありません。もし迎え入れることを検討する場合には、現地でのブリーディング状況や輸入手続き、専門家への相談体制の確保が必須となります。

ボヘミアン・シェパード・ドッグ

チェコ原産のボヘミアン・シェパード・ドッグは、中型サイズの作業・警備犬です。

体高はオスが52〜55cm、メスが49〜52cm、体重は17〜27kg程度と、シェパードの中では比較的扱いやすいサイズ感をしています。

ブラックを基調に鮮やかなタン・マーキングが入った美しい長毛を持ち、活発でフレンドリー、かつ人間と協力して行動することを好む性格です。

コーカシアンなどの超大型護畜犬とは異なり、家庭犬や各種ドッグスポーツのパートナーとしても適した素質を持っています。

まとめ

正面を向いて座る3匹のシェパード系犬種

「シェパード」という言葉は、日本で親しまれているジャーマン・シェパード・ドッグだけを指すものではありません。

ホワイト・スイス・シェパード・ドッグやオーストラリアン・シェパード、ベルジアン・シェパード・ドッグ、ダッチ・シェパード・ドッグなど、世界には非常に多彩なシェパードが存在します。

さらに、比較的コンパクトなミニチュア・アメリカン・シェパードから、コーカシアンやセントラル・アジア、カンガルのような超大型の護畜犬まで、大きさも性質も様々です。

ベルジアンのように1つの犬種内に4つの公式バラエティーが存在する場合もあれば、ジャーマンやオーストラリアンで言われる「種類」のように、毛色や系統の違いを指している場合もあります。

また、黒や白といった同じ被毛の色を持っていても、全く異なる犬種であることが多いため、毛色だけで種類を判断することはできません。

シェパードの魅力や違いを知るためには、見た目や名前だけでなく、それぞれの犬種が辿ってきた歴史、本来の役割(牧羊犬か護畜犬か)、性格傾向や必要な運動量を正しく理解することが大切です。