グレーハウンドってどんな犬?

正面を見つめているグレーハウンド

グレーハウンドは、圧倒的な走力と気品ある佇まいを兼ね備えた大型犬種です。一般的に「グレーハウンド」と呼ぶ場合、イギリスを原産国とする「イングリッシュ・グレイハウンド」を指すことが大半を占めます。

日本国内における表記や呼び名としては、英語の発音に近い「グレイハウンド」や、英語表記の「Greyhound」が用いられることもありますが、すべて同じ犬種を意味しています。

この犬種は、優れた視力で獲物を認識し、持ち前のスピードで追い詰める「サイトハウンド」という狩猟犬のグループに分類されます。

初めてこの名前を耳にする方のなかには、日本でよく見かける小型犬の「イタリアン・グレーハウンド」をイメージする方もいるかもしれません。

インターネット検索でも、小型のグレーハウンドを探している方が見受けられますが、グレーハウンドは成犬になると十分な存在感を持つ大型犬です。イタリアン・グレーハウンドとは、名前や体型の一部が似ているものの、サイズも歴史も異なる全く別の犬種です。

まずはグレーハウンドが、非常に大きく力強い身体を持ったサイトハウンドであるという全体像を掴むことが大切です。

グレーハウンドの歴史

ドッグレースで疾走する4頭のグレーハウンド

グレーハウンドの起源は極めて古く、数千年前の古代エジプトや中東の遺跡に、その祖先とみられる犬の姿が描かれているほどです。

古くから視覚と並外れた走力を活かし、砂漠や平原でウサギなどの獲物を追うサイトハウンドとして人々に重宝されてきました。

歴史の起源には諸説ありますが、現在の洗練された犬種として血統や外見が標準化されたのはイギリスです。イギリスの貴族社会において、ドッグスポーツの一種であるコーシングや、直線のコースを走らせるドッグレースの主役として熱狂的な人気を集めることになりました。

彼らが現代に受け継いでいる特徴的な細身の体型や、酸素を多く取り込むための深い胸、爆発的な瞬発力は、すべてレースや狩猟で速く走るために研ぎ澄まされたものです。

また、獲物を激しく追いかける本能が発達している一方で、役割を終えて家庭に入ると非常に穏やかで愛情深い気質を見せます。近年では、海外のドッグレースを引退した犬たちを家庭犬として保護し、里親として迎える活動も世界的に行われています。

歴史の中で培われた高い身体能力と、家庭内での静かな佇まいは、彼らが歩んできた実用犬としての歴史と深く結びついています。

グレーハウンドの特徴

草むらに立って遠くを見つめるグレーハウンド

グレーハウンドの見た目は、一読して他の犬種と見間違えることのないほど個性的で洗練されています。

最も目立つのは、驚異的なスピードを生み出すために発達した、しなやかで無駄のない筋肉質の体つきです。天を突くように長い首と、前方へ細長く伸びた頭部は、走る際の空気抵抗を減らす構造になっています。

さらに、前足と後ろ足を大きく連動させるために引き締まった腹部と、弓なりにカーブした美しい背中のラインが特徴です。

被毛は、皮膚に密着するようになめらかで短いスムースコートに覆われており、これが全身のシルエットをより際立たせています。

大型犬でありながら余分な脂肪がほとんどないため、一見すると「痩せすぎではないか」と感じる方も少なくありません。健康な状態であっても、肋骨のうっすらとした浮き上がりや、腰の骨のラインが見えやすいのがこの犬種本来の正しい体型です。

この優雅でスリムな外見のすべてが、時速70キロメートル近くに達するとされる、速く走るための必然から生まれた機能美です。

グレーハウンドの大きさ

グレーハウンドの平均的な体高は、オスが約71cmから76cm、メスが約68cmから71cmです。体重の目安は、オスが約29kgから32kg、メスが約27kgから29kg程度となります。

柴犬などの一般的な中型犬と比べても遥かに大きく、完全な大型犬に分類されるサイズ感を持っています。体型が非常に細身であるため、体重の数字だけを見ると一見軽く感じられるかもしれませんが、実際の体高や体長はかなりの大きさです。

そのため、成犬を室内で飼育するとなれば、寝床となるスペースの確保や、車で移動する際のケージの大きさなどを十分に考慮しなければなりません。

散歩時に急に引っ張られた際の制御や、動物病院への通院、介護が必要になった際の負担までをあらかじめ想定する必要があります。

ペットショップなどでよく見かけるイタリアン・グレーハウンド(体重約5kg前後)や、中型犬のウィペットとサイズを混同してしまうと、実際の大きさに驚くことになるため注意が必要です。

グレーハウンドの被毛タイプ

グレーハウンドの被毛は、極めて短く皮膚にぴったりと寄り添うように生えているスムースコートのみです。ゴールデン・レトリバーのような長毛種と違い、毛が絡まることによる毛玉の発生や、毎日の入念なもつれ解きの負担はありません。

しかし、手入れが簡単そうに見える一方で、短毛種ならではのデリケートな皮膚への配慮が必要です。毛が短いということは、外部からの刺激が直接皮膚に伝わりやすいことを意味し、抜け毛が服や家具に刺さりやすいという側面もあります。

さらに、脂肪が薄く毛も短いため、皮膚の乾燥や、硬い床に擦れることによる床ずれ、そして何よりも寒さに対して非常に弱いという弱点があります。

日常的な軽いブラッシングによる血行促進と皮膚のチェック、シャンプー後の迅速な保温対策、そして何より身体を保護するための柔らかい寝床づくりが不可欠な犬種です。

グレーハウンドの毛色の種類

グレーハウンドの毛色は非常にバリエーションが豊富で、ドッグショーや血統登録機関でも多くの色彩が認められています。代表的なものとして、漆黒のブラック、純白のホワイト、明るい茶系のレッド、神秘的な灰色であるブルーが挙げられます。

他にも、やや薄い砂色のようなフォーンや、さらに淡い黄褐色のファロー、そして虎目模様のような美しい縞が入るブリンドルが存在します。

これらの単色だけでなく、それぞれのカラーに白色の斑が大きく入る組み合わせなど、個体によって模様の出方は多種多様です。

インターネットで「黒いグレーハウンド」を探している方も多いですが、艶やかなブラックの個体も定番の毛色としてしっかりと存在しています。

毛色によって受ける印象は大きく変わりますが、毛色の違いによって犬の性格が変わったり、健康状態や犬としての価値が左右されたりすることはありません。

グレーハウンドの性格

ソファの上に座っているグレーハウンド

グレーハウンドは、その圧倒的な走走姿の迫力とは裏腹に、家庭内では非常に穏やかで落ち着いた性格をしています。基本的には繊細で静かな環境を好み、家族に対して深い愛情を注ぐため、室内ではまるで猫のように静かに寝そべっていることが多い犬種です。

吠えやすい犬種ではないため、近隣への騒音トラブルになりにくいという面もあり、住環境のルールを守りやすい家庭犬といえます。

一方で、その繊細さゆえに、知らない人や急な大きな音、騒がしい環境に対しては、非常に慎重になり一歩引いてしまう個体も少なくありません。

小さな子どもや先住犬がいる家庭では、お互いの距離感を守るための配慮が必要であり、特に猫や小動物に対しては、狩猟本能が刺激されて追いかけてしまうリスクがあります。

お留守番自体は落ち着いてこなせる性質を持っていますが、長時間の放置や孤独が続くと、ストレスを感じて元気がなくなってしまうこともあります。

穏やかで攻撃性が低いからといって、犬の飼育が初めての初心者が安易にコントロールできるとは限らず、大型犬としての力強さと繊細さを理解できる知識が求められます。

グレーハウンドの価格相場

後ろを振り返るグレーハウンドの子犬

日本国内におけるグレーハウンドの子犬の価格相場は、流通量が極めて少ないため、一概にいくらと断定することが困難です。

プードルやチワワのように一般的なペットショップに並ぶことはほぼなく、国内の専門ブリーダーも数えるほどしか存在しません。

実際の価格は、犬の血統の良さ、生後の月齢、性別、毛色の希少性、親犬のドッグショーでの実績や健康状態によって大きく変動します。

また、国内での繁殖個体だけでなく、海外の優秀な犬舎から直接輸入するケースもあり、その場合は輸送費や手続き費用が加算されます。

飼育を始める際には生体の購入価格だけでなく、大型犬を迎えるためのケージやサークルなどの初期費用、毎月の多額の食費や医療費が必要です。

万が一の病気に備えるペット保険の加入、寒さをしのぐための衣服や大型犬用のクッションや寝具、社会化のためのトレーニング費用も発生します。

生涯にわたってかかる年間飼育費用は、中型犬や小型犬の数倍におよぶ可能性があることを十分に想定しておく必要があります。

グレーハウンドのブリーダーを探す方法

日本国内でグレーハウンドの子犬を迎えたい場合、まずは国内にわずかに存在するシリアスブリーダーを探し、直接連絡を取るのが一般的な方法です。

子犬の出産情報を随時確認し、見学の際には親犬の健康状態や性格、飼育環境が衛生的に保たれているかを確認させてもらいましょう。

また、子犬期における社会化の進め方や、事前のワクチン接種、健康診断の有無、契約内容、引き渡し後の相談体制が整っているかも重要なポイントです。

国内では常に子犬が生まれているわけではないため、事前の予約や、長期間の出産待ちを求められるケースも覚悟しなければなりません。

もし海外から個人輸入の形で迎える場合には、現地のブリーダーとの交渉に加え、輸出入の手続き、検疫、長時間の空輸による犬への負担、各種書類の精査が必要です。

その他、レース引退犬や保護犬の里親になる選択肢もありますが、その際は犬の年齢、過去の医療歴、家庭生活への慣れ具合を事前に細かく確認しましょう。

グレーハウンドの飼い方

飼い主の隣に立っている散歩中のグレーハウンド

グレーハウンドと現実的に暮らしていくためには、彼らの特殊な身体のつくりに合わせた住環境の整備が何よりも重要になります。

大型犬ではありますが、室内では驚くほど静かに過ごすため、広い専用の部屋がどうしても必要というわけではありません。

ただし、体脂肪が極めて薄く皮膚がデリケートなため、硬いフローリングの床で生活させると、関節や皮膚を痛めて床ずれの原因になります。室内には必ず滑り止めのマットを敷き詰め、肉厚で柔らかい大型のベッドやクッションを複数箇所に用意してあげる工夫が必要です。

また、足が細く長いため、階段の昇り降りや段差からの飛び降りは、関節や骨に大きな負担をかけるためできるだけ避けさせます。

日々の散歩コースの選定に加え、体調不良時にすぐ連れて行ける大型犬対応の動物病院の確保、さらにはマンションなどの住居規約の確認も必須です。

グレーハウンドの運動量

グレーハウンドは世界最速級の走力を持つ犬種ですが、毎日何時間も全力疾走をさせ続けなければならないわけではありません。彼らは長距離を走り続けるスタミナ型の犬種ではなく、短い距離を爆発的なスピードで駆け抜ける瞬発力に優れた犬種です。

日常の運動としては、1回につき1時間程度の散歩を、朝と晩の1日2回おこなってあげるのが基本的な目安となります。

散歩の基本は徒歩や軽いジョギングで十分ですが、運動不足が続くとストレスを溜め込み、肥満の原因にもなるため毎日の継続が大切です。

ときには、周囲が頑丈なフェンスで完全に囲まれたドッグランなどを利用し、短時間でも安全に自由運動をさせてあげると素晴らしい気分転換になります。

ただし、ひとたび動くものを見つけると驚異的なスピードで飛び出すため、一般の場所でのノーリードや不完全なリード管理は絶対に避けてください。

グレーハウンドのしつけ方

グレーハウンドのしつけは、家庭に迎えたその日から始める、徹底した社会化トレーニングと安全管理が軸となります。

繊細な気質を持っているため、人間社会の様々な音や乗り物、他人の姿、他の犬、動物病院の環境に少しずつ慣れさせていくことが重要です。

散歩中の引っ張りや急な走り出し、他者への飛びつき、拾い食いを防ぐため、子犬のうちから確実なリードワークを身に付けさせましょう。動くものを本能的に追いかけるサイトハウンドの特性があるため、屋外での「呼び戻し」の過信は禁物であり、ノーリードでの管理は厳禁です。

彼らは非常にプライドが高く傷つきやすい一面もあるため、大声で叱り飛ばしたり、力で抑えつけたりするような訓練方法は全く効果がありません。

一貫した明確な家族のルールを作り、正しい行動ができたときに優しく褒めて安心感を与えることで、信頼関係を築いていく方針が最適です。

グレーハウンドのケア方法

被毛が短いグレーハウンドのケアは、毎日のラバーブラシなどを使った優しいブラッシングと、定期的な皮膚のチェックが基本です。短毛であっても季節の変わり目にはしっかりと毛が抜けるため、不要な毛を取り除き、皮膚の通気性を保ってあげる必要があります。

特に肘や腰まわりなど、骨が突き出ている部分は床との摩擦でこすれやすく、皮膚が硬くなったり床ずれを起こしたりしやすいので注意深く観察します。

運動能力が高いため爪が伸びるスピードも考慮し、定期的な爪切りを行うほか、大型犬に多い歯周病を予防するための毎日の歯磨きも必須です。

体脂肪が少なく寒さに極端に弱いため、冬場の屋外散歩では必ず犬用の防寒コートや服を着用させて身体を冷やさないように工夫します。シャンプーをした後も、皮膚の乾燥を防ぐために素早く水分を拭き取り、室内の温度管理と合わせて暖かい環境を維持してあげてください。

グレーハウンドの寿命と病気

服を着て犬用ベッドの上で休むグレーハウンド

グレーハウンドの平均寿命の目安は、およそ10年から14年程度とされており、一般的な大型犬の平均値と同等か、やや長生きする傾向にあります。

この寿命の数字を全うし、最後まで健康的に暮らすためには、日々の徹底した健康管理と異常への早期発見が欠かせません。

特に重要なのは、細身の体型を維持しながらも、必要な筋肉量を落とさないための適切な体重管理と、足腰に負担をかけない適度な運動のバランスです。

スリムな体型を保つことはこの犬種の特性として正解ですが、食事量を減らしすぎて痩せすぎに陥ったり、運動不足で筋肉が衰えたりすることは避けなければなりません。

また、骨や関節への配慮はもちろんのこと、食後の過ごし方や、歯周病から全身の疾患へ繋がるのを防ぐための入念な歯科ケアも寿命を左右します。

その上で、異変がなくても、動物病院での定期的な健康診断を若いうちから習慣化しておくことが、健康寿命を延ばす最大の秘訣です。

グレーハウンドのかかりやすい病気

グレーハウンドを飼育する上で、最も警戒しなければならない深刻な病気の一つが「胃拡張・胃捻転症候群」です。これは胸の深くて広い犬種に多く見られる突発的な疾患で、胃にガスが溜まって捻れてしまい、最悪の場合は数時間で命を落とす恐れがあります。

予防策としては、1回の食事量をドッグフードだけに頼らず小分けにし、食後1時間から2時間は絶対に激しい運動をさせず、静かに休ませることが挙げられます。

次に注意したいのが、細くて長い脚に大きな負荷がかかることで発生する「骨折」のリスクです。フローリングなどの滑りやすい床での方向転換や、高い場所からの無理な飛び降りは骨折に直結するため、室内環境の整備でリスクを未然に防ぎます。

最後は「歯周病」であり、口腔内の細菌が血管を通じて内臓に悪影響を及ぼす可能性があるため、毎日の丁寧なブラッシングによる管理が推奨されます。

グレーハウンドに似た犬種

向かい合うイタリアン・グレーハウンドとボルゾイ

グレーハウンドと見た目や名前が似ているため、一般の方のなかで混同されやすい犬種がいくつか存在します。

まず、最も間違われやすいのが「イタリアン・グレーハウンド」ですが、こちらは体重5kg前後の完全な小型犬であり、サイズが全く異なります。

次に似ている「ウィペット」は中型犬サイズであり、グレーハウンドを一回り小さくしたような外見ですが、日本の住環境では比較的出会いやすい犬種です。

さらに、同じサイトハウンドの仲間である「ボルゾイ」や「サルーキ」は、美しい長毛や飾り毛を持っており、優雅な顔立ちや高い運動量という共通点があります。

犬種名 サイズ区分 被毛の特徴 国内での入手難易度
グレーハウンド 大型犬 短毛(スムース) 非常に高い(極めて稀)
イタリアン・グレーハウンド 小型犬 短毛(スムース) 低い(比較的容易)
ウィペット 中型犬 短毛(スムース) 普通(専門ブリーダー有)
ボルゾイ 大型犬 長毛(ウェーブ) やや高い

ミニチュア・ピンシャーやドーベルマンのように、引き締まった体型をした犬種と比較されることもありますが、彼らは使役犬のグループです。

グレーハウンドはあくまで視覚で獲物を追ってきたサイトハウンドであり、その歴史的な成り立ちや役割、気質は他のグループの犬とは根本的に異なります。

まとめ

芝生の上に並ぶ2頭のグレーハウンド

グレーハウンドは、古代からの長い歴史のなかで、優れた視力と走力を磨き上げてきた世界最速級の大型サイトハウンドです。洗練された細身のシルエットや深い胸といった特徴を持ち、ドッグスポーツの歴史とともに現在のイギリスで標準化されました。

そのダイナミックな走走のイメージとは異なり、家庭内では非常に穏やかで、吠えにくく静かに過ごすことを好む優しい性格をしています。

しかし、日本国内での流通量は極めて少なく、子犬の価格相場やブリーダーからの入手ルートを確認するには相応の準備と時間が必要です。

実際に飼育を始めるにあたっては、大型犬としての莫大な維持費だけでなく、デリケートな短毛種の皮膚を守るための床ずれ防止や寒さ対策が必須となります。

毎日の散歩による適度な運動管理、胃捻転や骨折への医学的な配慮、そして何より屋外での動くものへの追いかけ本能をコントロールする責任が伴います。

グレーハウンドは、その美しいスタイルと家庭犬としての優れた魅力をあわせ持つ素晴らしい犬種ですが、日本で迎えるには相応の覚悟と知識を持って慎重に検討を重ねたい犬種です。