ブルドッグの種類

芝生の上に立って正面を見つめるブルドッグ

ブルドッグという言葉を聞いたとき、多くの人が頭に思い浮かべるのは、低重心で頑丈な体つきをしたお馴染みの姿かもしれません。一般的に「ブルドッグ」と言えばイングリッシュ・ブルドッグを指すことがほとんどです。

しかし、インターネットで検索をしてみると、フレンチ・ブルドッグやアメリカン・ブルドッグなど、「ブルドッグ」の名を冠する様々な犬たちが存在していることに気づくでしょう。これらはすべてブルドッグの血筋や歴史に関わりのある、いわゆる「ブルドッグ系」の犬たちです。

初めてブルドッグ系の犬を迎えたいと考えている方は、これらの違いが分からずに混乱してしまうことがあります。実は、ブルドッグの種類を整理するときには、いくつかの異なる視点(軸)を分けて考える必要があります。

具体的には、現在公認されている「犬種としての種類」、過去の歴史の中に登場する「歴史上の種類」、毛並みの色を指す「毛色の種類」、そして見た目が似ているために「混同されやすい別の犬種」という4つの軸が存在します。

この記事では、ブルドッグ系の全体像をすっきりと整理できるよう、それぞれの軸を分かりやすく解説していきます。まずは、現在出会うことができる代表的なブルドッグ系の犬種から順番に見ていきましょう。

代表的なブルドッグ系犬種

フレンチ・アメリカン・イングリッシュブルドッグが並ぶ光景

ブルドッグ系の犬たちを具体的に知るために、まずは現在日本でも血統書を発行する団体などに登録され、実際に家庭犬として暮らしている代表的な3つの犬種をご紹介します。

それぞれの犬種がどのような背景で生まれ、どれくらいの大きさになり、どんな特徴を持っているのかを詳しく解説します。

イングリッシュ・ブルドッグ

一般的に、単に「ブルドッグ」と呼ばれる犬種が、このイングリッシュ・ブルドッグです。原産国はイギリスで、日本の主要な登録団体であるジャパンケネルクラブ(JKC)でも、公式な犬種名は「ブルドッグ」と表記されます。

かつては牛と犬を戦わせる「ブル・ベイティング」という凄惨なスポーツに関わっていた歴史を持ちますが、その後は愛好家たちの手によって攻撃的な性格が完全に取り除かれ、現在では非常に穏やかな家庭犬として親しまれています。

犬種標準として定められている体重の目安は、オスが約25kg、メスが約23kgです。体高(地面から背中までの高さ)の公式基準には明確な数値規定がありませんが、一般的には30cmから40cm程度に収まることが多く、非常に低く重厚な体つきをしています。

生活上のサイズ感としては、体高だけで見れば中型犬に相当しますが、実際に抱き上げたときや目の前にしたときの重量感や存在感は、大型犬に負けないほどの迫力があります。がっしりとした骨太の体格に、短いマズル(鼻口部)、そして顔に刻まれた深いしわが最大の特徴です。

その強面な見た目とは裏腹に、性格は非常に愛情深く、家族に対して従順でひょうきんな一面も持ち合わせています。

飼育する上での注意点としては、マズルが短い「短頭種」であるため暑さに極めて弱いこと、呼吸音が大きくなりやすいこと、顔のしわの間に汚れが溜まりやすいこと、そして太りやすいため徹底した体重管理が必要なことが挙げられます。

フレンチ・ブルドッグ

日本国内で非常に高い人気を誇り、街中でも見かける機会が多いのがフレンチ・ブルドッグです。その名の通り原産国はフランスで、19世紀にイギリスから持ち込まれたミニチュアサイズのブルドッグに、パグやテリア系の犬を交配して小型化・愛玩犬化された歴史を持っています。

ジャパンケネルクラブの公式な体高の目安は、オスが27cmから35cm、メスが24cmから32cmとされています。体重の目安は、オスが9kgから14kg、メスが8kgから13kgの範囲内です。

生活上のサイズ感としては、一般的な小型犬よりは一回り大きく筋肉質ですが、イングリッシュ・ブルドッグに比べると非常にコンパクトで、日本の住環境でも比較的迎えやすいブルドッグ系と言えます。

最大の外見的特徴は、イングリッシュ・ブルドッグのような垂れ耳ではなく、ピンと上を向いた大きな「コウモリ耳(バット・イヤー)」を持っている点です。短いマズルと、コンパクトながらもがっちりとした筋肉質の体型が愛嬌を放っています。

性格は非常に社交的で活発、遊ぶことが大好きで、人間にも他の犬にもフレンドリーな個体が多い傾向にあります。

なお、フレンチ・ブルドッグという犬種は1つだけですが、お迎えを検討して調べていくと、毛色や体型の好みが「種類」として語られることが多くあります。これについては、後ほど毛色の章で詳しく整理して解説します。

アメリカン・ブルドッグ

大きくて力強いブルドッグ系を探している方にとって、重要な選択肢となるのがアメリカン・ブルドッグです。そのルーツはイングリッシュ・ブルドッグの祖先犬にあり、アメリカへ渡った入植者たちが、農場の番犬や野生のイノシシを狩る作業犬として発展させてきました。

アメリカン・ブルドッグは、登録する団体や系統(ブリー・タイプやスタンダード・タイプなど)によって体格に大きな幅があります。

そのため、公式基準を一概に断定することはできませんが、一般的には体高が50cmから65cm前後、体重が30kgから50kg以上になる個体も存在します。

生活上のサイズ感としては、イングリッシュ・ブルドッグやフレンチ・ブルドッグとは比較にならないほど大きく、完全に「大型犬」としての存在感とパワーを持っています。

見た目は非常に筋肉質で引き締まっており、他のブルドッグ系に比べて足が長く、優れた運動能力を感じさせるスポーティーな体型をしています。

非常に勇敢で家族を守ろうとする意識が強く、適切に育てれば忠実なパートナーになりますが、元々が作業犬であるため豊富な運動量としつけ、そして広い飼育スペースが必要です。

日本国内ではイングリッシュ・ブルドッグやフレンチ・ブルドッグほど一般的ではなく、ジャパンケネルクラブ(JKC)でも公認されていません。

他の主要団体における登録上の扱いも異なる場合があるため、お迎えを検討する際は、犬種名や血統、登録団体の規約を事前によく確認することが重要です。

絶滅したブルドッグや歴史上の種類

2頭のブルドッグのうち小柄な1頭が振り向いている様子

ブルドッグの歴史を調べていくと、現在ペットショップやブリーダーのもとで見かける犬種以外にも、様々な「ブルドッグ」という名前を目にすることがあります。

ここでは、過去に存在していた歴史的な種類や、現在の販売市場で使われている呼称について補足します。これらを正しく知ることで、現代の犬種との関係性をより深く理解できるようになります。

ミニチュア・ブルドッグ/トイ・ブルドッグ

「小さいブルドッグ」を探しているときに、ミニチュア・ブルドッグやトイ・ブルドッグという言葉を見かけることがあります。これらは、現代において血統書を発行する主要団体から独立した「正式な犬種」として安易に断定することはできません。

歴史を遡ると、18世紀から19世紀のイギリスにおいて、標準的なイングリッシュ・ブルドッグの中から、小柄な個体をベースに愛玩犬として小型化された「トイ・ブルドッグ」という犬種が存在していました。

このトイ・ブルドッグは、後にフランスへ渡ってフレンチ・ブルドッグの誕生に深く関わったり、アメリカでボストン・テリアが作出される過程で語られたりしたのち、残念ながら歴史の中で絶滅してしまいました。

現代において「ミニチュア・ブルドッグ」や「トイ・ブルドッグ」という名前が使われる場合は、歴史的な犬種を指しているのではなく、標準より小さく生まれた個体や、異犬種を交配したミックス犬に対して販売上で付けられた呼称であることがほとんどです。

もし現在「小さなブルドッグ」を探しているのであれば、販売用のキャッチコピーに惑わされず、それがフレンチ・ブルドッグなのか、イングリッシュ・ブルドッグの小柄な個体なのか、あるいはミックス犬なのかを冷静に見極める必要があります。

ブルドッグの種類ごとの違い

2頭並んでいるイングリッシュ・ブルドッグとフレンチ・ブルドッグ

ここまで代表的なブルドッグ系の犬種を紹介してきましたが、実際に自分たちの暮らしに迎えるとしたら、どこを基準に選べば良いのでしょうか。

ここでは、それぞれの犬種の特徴を「生活のリアルな場面」に落とし込みながら比較していきます。

大きさ・体格の違い

3つの犬種は、家の中での存在感や扱いやすさが大きく異なります。

フレンチ・ブルドッグは最も小柄でコンパクトなため、日本のマンション環境でも比較的お世話がしやすく、いざという時に抱っこをしやすいサイズ感です。

イングリッシュ・ブルドッグは、体高こそフレンチ・ブルドッグと大きく変わりませんが、体重が2倍近くあるため、室内での存在感は一気に増します。散歩時に引っ張られたときの力も強く、気軽に抱き上げるにはかなりの筋力が必要です。

アメリカン・ブルドッグは、体高も体重も群を抜いて大きく、飼育するには十分な部屋の広さや、万が一のときに犬の力を完全にコントロールできる強固なリーダーシップと体力が飼い主に求められます。

見た目の違い

共通して「短いマズル」や「筋肉質な体つき」「愛嬌のある表情」を持っていますが、シルエットには明確な差があります。

フレンチ・ブルドッグはピンと立った耳がトレードマークで、全体的に四角く引き締まったコンパクトな印象です。

イングリッシュ・ブルドッグは耳が垂れており、胸幅が広く、地面にへばりつくような重厚で低い独特の体型をしています。

アメリカン・ブルドッグはマズルがやや長めで、足が長く、アスリートのようなスポーティーで力強い印象を与えます。

なお、子犬の時期や個体差によっては、見た目だけで犬種を判断しにくい場合もあります。トラブルを防ぐためにも、お迎えの際は必ず犬種名や血統書、登録情報を確認するようにしましょう。

性格の違い

一般的に語られやすい傾向として、イングリッシュ・ブルドッグは非常に穏やかで、どっしりと構えたマイペースな性格をしています。

フレンチ・ブルドッグは明るく、好奇心旺盛で人懐っこい陽気なキャラクターが魅力です。

アメリカン・ブルドッグは、作業犬としての背景から、非常に活発で防衛本能が強く、家族に対して熱い忠誠心を見せる傾向があります。

ただし、これらの性格はあくまで犬種全体の傾向に過ぎません。実際の性格は、生まれ持った個体差に加え、子犬期の「社会化(様々な人や環境に慣れさせること)」や、その後のしつけ、どのような生活環境で育ったかによって大きく変化することを覚えておいてください。

飼いやすさの違い

「サイズが小さいから簡単」「大きいから難しい」と単純に分けることはできません。

フレンチ・ブルドッグやイングリッシュ・ブルドッグは、日本の高温多湿な夏を乗り切るための厳重な室温管理や、呼吸器への配慮、日常的な皮膚のケアが必要になり、医療費の備えも重要です。

一方でアメリカン・ブルドッグは、それらの健康管理に加えて、大型犬としての膨大な運動量を消化させるための毎日の散歩や、ドッグランなどの広いスペース、そして他人に危害を加えないための徹底した社会化としつけの手間がかかります。

ご自身の住環境、毎日にかけられる時間、そして体力に合わせて比較することが大切です。

ブルドッグ系の毛色・カラーの種類

異なる毛色の5頭のフレンチ・ブルドッグが並んでいる光景

ブルドッグ系の犬たちを選ぶ際、もう一つの大きな楽しみとなるのが「毛色(カラー)」です。毛色は犬種の種類とはまったく別の軸ですが、見た目の印象を大きく左右します。

ここでは、特に毛色のバリエーションが注目されやすいイングリッシュ・ブルドッグとフレンチ・ブルドッグの代表的なカラーについて解説します。

イングリッシュ・ブルドッグの毛色

イングリッシュ・ブルドッグの犬種標準(公式な基準)では、様々な毛色の表現が認められています。代表的なものとして、全体が茶褐色の「レッド」や「フォーン」、虎のような縞模様が入る「ブリンドル」、純白の「ホワイト」があります。

また、白をベースに他の色が斑点のように入る「パイド」や、鼻や口周りの毛の先端に黒が混じる「スマット」なども存在します。一方で、黒一色(ブラック)などは公式には好ましくない色とされています。

毛色によって見た目の渋みや愛らしさは変わりますが、毛色の違いによって犬の性格や健康状態が決定づけられるわけではありません。それぞれの個性のひとつとして捉えるのが良いでしょう。

フレンチ・ブルドッグの毛色

フレンチ・ブルドッグは毛色への関心を持つ読者が非常に多い犬種です。

一般的に知られている代表的なカラーには、ベースとなる色に黒色や茶色の縞模様が混じる「ブリンドル(虎柄)」、明るい茶系の「フォーン」、白地に黒やフォーンの斑が入る「パイド」、そして優しい薄黄色の「クリーム」などがあります。

ただし、犬種標準上の厳密な表記では「フォーン」と「ブリンドル」、およびそれらにホワイトの斑があるもの、と大枠が示されており、ペットショップなどの販売サイトで使われるカジュアルな呼び方とは異なる場合があります。

近年、SNSなどで「ブルー」や「チョコレート」といった非常に珍しいカラーが紹介され、人気を集めることがあります。こうした希少色を探す場合は、単に見た目の珍しさだけで飛びつくのは禁物です。

稀に無理な繁殖によって健康リスクを抱えているケースもあるため、血統書上の正確な表記や、ブリーダーの繁殖方針、その子自身の健康状態をしっかりと確認する視点を持つことが大切です。

ブルドッグの種類と間違えやすい犬

路上に立っているボストン・テリア

ブルドッグの種類をインターネットで調べていると、見た目や名前の響きが似ているために、同じ仲間として混同されてしまいがちな別犬種が存在します。

ここでは、特にフレンチ・ブルドッグと間違われやすい代表的な犬種を挙げ、その決定的な違いについて解説します。

ボストン・テリアとの違い

ブルドッグの種類と最も混同されやすいのが、ボストン・テリアです。結論から言うと、ボストン・テリアはブルドッグの種類(亜種)ではなく、独立した「別の犬種」として扱われます。

歴史を紐解くと、ボストン・テリアはアメリカでイングリッシュ・ブルドッグとブル・テリアなどを交配して作られた背景があるため、ブルドッグ系の血を色濃く引いていることは事実です。そのため、特にフレンチ・ブルドッグとは一見すると見分けがつかないほどよく似ています。

見分けるためのポイントは、全体のシルエットと体型です。フレンチ・ブルドッグが低重心で骨太、筋肉質でずんぐりとした体型をしているのに対し、ボストン・テリアは全体的にスマートで脚が長く、スタイリッシュな体型をしています。

また、フレンチ・ブルドッグの耳が丸みを帯びたコウモリ耳であるのに対し、ボストン・テリアの耳は先端がやや尖っているのも特徴です。枝分かれした歴史の中で一緒に語られることが多いですが、全く異なる魅力を持った別犬種です。

ブルドッグ系を迎える前に知っておきたいこと

診察台の上にいるイングリッシュ・ブルドッグとフレンチ・ブルドッグ

どのブルドッグ系の犬種を迎えるにしても、彼らのユニークな身体の構造上、健やかに暮らすために飼い主が絶対に知っておかなければならない共通の注意点があります。

この記事は飼育の完全ガイドではありませんが、お迎えを検討する上での最低限の心構えとして、特に重要な2つのポイントに絞って解説します。

暑さと呼吸への配慮

イングリッシュ・ブルドッグやフレンチ・ブルドッグに代表されるマズルの短い犬たちは、「短頭種(たんとうしゅ)」と呼ばれます。短頭種は構造上、体熱を逃がすための効率的な呼吸が苦手で、日本の夏の暑さには極めて弱いです。

夏場の日中の散歩は絶対に避け、早朝や日没後の涼しい時間帯を選ばなければなりません。また、室内では24時間体制での厳重なエアコンによる室温管理が必須となり、車内への置き去りは短時間であっても命に関わります。

日頃から愛犬の呼吸音に耳を傾け、いつもより苦しそうにハァハァと息をしていたり、散歩ですぐにバテてしまったりする様子が見られた場合は、無理をさせずに早めに動物病院を受診する体制を整えておきましょう。

見た目の愛らしさの裏には、こうした繊細な体質があることを理解する必要があります。

皮膚のしわと体重管理

ブルドッグ系の大きなチャームポイントである顔や体のかわいらしい「しわ」ですが、このしわの折り重なった奥には、汚れや湿気が非常に溜まりやすいという特徴があります。

定期的にお手入れをしてあげないと、雑菌が繁殖して皮膚トラブルを引き起こしたり、強いにおいの原因になったりします。毎日のように優しくしわの間を拭いて、清潔かつ乾燥した状態を保つケアが欠かせません。

あわせて、ブルドッグ系は太りやすい体質の犬が多く、肥満は短いマズルの呼吸をさらに圧迫するだけでなく、重い体を支える関節や、皮膚のたるみ、心臓など全身に大きな負担をかけます。

愛犬の健康な体を維持するためには、適切な食事量の管理と、体に負担の少ない適度な散歩を、毎日のルーティンとして無理なく継続していく飼い主の徹底した自己管理能力が求められます。

まとめ

2頭でじゃれ合うフレンチ・ブルドッグの子犬とイングリッシュ・ブルドッグ

ブルドッグの世界には、一般的にイメージされるイングリッシュ・ブルドッグをはじめ、日本で大人気のフレンチ・ブルドッグ、大型でパワフルなアメリカン・ブルドッグ、そして歴史的には絶滅したミニチュア・ブルドッグなど、様々な種類や関連する呼び名が存在します。

それぞれの種類によって、体の大きさや見た目のシルエットはもちろん、生まれ持った性格の傾向、必要な運動量やしつけの難しさ、そして毛色のバリエーションにいたるまで、細かな違いがあることをお分かりいただけたかと思います。だからこそ、単に「名前の響き」や「流行りの見た目」だけで安易に選ぶのはおすすめできません。

ブルドッグ系の犬たちは、一度心を通わせれば、そのユーモラスな表情としぐさで家族を包み込んでくれる最高の相棒になります。

彼ら特有の「暑さ対策」「皮膚のしわ掃除」「シビアな体重管理」といったお世話の手間やリスクまでを100%丸ごと愛し、守り切る覚悟を持った上で、ご自身の家庭のライフスタイルに最も寄り添ってくれる素敵な種類をじっくりと検討してみてください。